夕焼け空を背に、静かに揺れる波を見詰めている。岡山港の岸壁にたたずみ、藍野美佳(56)が口を開く。「車に3人の子どもを乗せて何度もここに来た。車ごと海に飛び込んで死ぬつもりだった。でも久しぶりに来て、思い出しました。私はここで、誰かに声をかけてほしかった。死のうとしていたけれど、同時に私は生きたかった」

 暴力にさらされた苦闘の日々。いま生きているのは奇跡だと思う。「私、よく生き延びたよね」と繰り返し言う。だからこそ誇り高くありたい。

 

丸刈りを...