サンフランシスコ講和条約発効から61年を迎えた2013年4月28日、東京で政府主催の「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」が初めて開かれた。「天皇陛下、万歳」。首相安倍晋三は出席者の声に呼応する形で両手を上げた。沖縄にとっては日本から切り離され、米軍統治下に置かれた「屈辱の日」。苦難の歴史への無理解を象徴する一日となった。

▽涙止まらず

 「苦しめられた日に、なぜ式典をやったのか。現場を見ない、知ろうとしない国会議員が増えた」。米軍キャンプ・ハンセンを抱える沖縄県金武町(きんちょう)の元町長吉田勝広(77)はため息をつく。沖縄では式典に合わせて抗議大会が開かれ、主催者発表で約1万人が「県民の心を踏みにじり、再び沖縄を切り捨てるものだ」と怒りの声を上げた。

 1995年に米兵による少女暴行事件が起きると、沖縄入りした首相橋本龍太郎は予定時間を大幅に超過し、吉田ら首長の訴えに耳を傾けた。金武町の米軍ブルービーチ訓練場を視察した官房長官梶山静六も、吉田に「素晴らしい海だ。何とか返還を実現したい」と熱く語り、抱き合った。

 橋本らの脳裏にあったのは、...