「砂の器」の舞台になったことを伝える石碑。松本清張が揮毫した=島根県奥出雲町亀嵩
「砂の器」の舞台になったことを伝える石碑。松本清張が揮毫した=島根県奥出雲町亀嵩

 俳優の田村正和さんが77歳で亡くなり訃報から一夜明けた19日、出演作のテレビドラマ「砂の器」の舞台になった島根県奥出雲町や原作者・松本清張(1909~92年)ゆかりの鳥取県日南町の関係者は「親近感を持っていただけに残念」と故人をしのんだ。

 田村さんは1977年放送のフジテレビドラマ「砂の器」に主演の一人の天才作曲家役で登場。ほかにも清張の作品に関連するテレビドラマに多数出演した。

 砂の器は奥出雲町の亀嵩が舞台の一部。他局のドラマに登場した奥出雲多根自然博物館館長の宇田川和義さん(73)は「多数ドラマ化されている砂の器の主演は、そのときの実力派俳優が採用される。まだまだ活躍していただきたかった」と口にした。

 JR木次線亀嵩駅内にある「扇屋そば」には、田村さんが共演した俳優・仲代達矢さん(88)の直筆サイン色紙がある。田村さんが亀嵩に訪れたかは不明だが、店主の杠哲也さん(58)は「砂の器の一つで演じられた方が亡くなるのは残念。作品の魅力が新しい世代にも伝わってほしい」と願った。

 清張の父の古里・日南町矢戸に文学碑を建てるなど活動する「矢戸と松本清張を語る会」会長の中田玉江さん(65)は、清張が作品を映像化する際、俳優選びに関与していたエピソードを踏まえ、田村さんの力量を買っていたのだと推察。「喜怒哀楽を表に出さないスマートな俳優で個人的にも好きだった」と残念がった。 (多賀芳文)