世間でもてはやされる故郷の姿を、どこか冷めた目で眺めていた。「そんなにええもんやろか」。徳島県南部の旧海部町(海陽町)は10年ほど前、「自殺の発生率が全国で最も低い自治体」として一躍脚光を浴びた。

 生まれ育った土地に愛着はある。ただ、内田加奈(45)にとっては何の変哲もない田舎で、その価値が分からなかった。

 海辺の小さな町だ。近所付き合いは活発だが、べたべたしていない。困っている人がいれば手助けし、人にも遠慮なく助けを求める。「右へ倣え」を嫌い、人と違っ...