第二章 道を行け(三十五)

 寅蔵は鼻をすんと鳴らした。

 大坂を出てからご無沙汰やもんなあ。寝床で考えることといえば遊妓の柔肌ばかりなのだ。だがさすがに居候の身では、遊里で遊ぶ銭...