深々と一礼し、リングに上がる。シャドーボクシングで汗を流し、休まずミット打ちに移る。得意の左ボディーブローに、分厚い防具を着けたトレーナーが「うっ、重い!」とうなる。

 膝が笑う。リングを下りて真っすぐ歩こうとすると、足が横へとふらついてしまう。それでも水を口に含み、またリングへ。息を吹き返したように、足が軽快に動く。体が覚えている。

 元世界王者の辰吉丈一郎(54)はもう40年近く、ほぼ毎日練習を欠かさない。「なんでやってるのかって聞かれるけど、僕からしたらなんで生...