裏山が崩れ、土砂が部屋にまで押し寄せ、立ち尽くす住民=雲南市掛合町多根
裏山が崩れ、土砂が部屋にまで押し寄せ、立ち尽くす住民=雲南市掛合町多根
家の前の土砂を流す住民たち=13日午前9時15分、雲南市三刀屋町三刀屋
家の前の土砂を流す住民たち=13日午前9時15分、雲南市三刀屋町三刀屋
裏山が崩れ、土砂が部屋にまで押し寄せ、立ち尽くす住民=雲南市掛合町多根
家の前の土砂を流す住民たち=13日午前9時15分、雲南市三刀屋町三刀屋

 山陰両県を襲った豪雨で警戒レベルが最高の「緊急安全確保」が発令された雲南市では13日、梅雨明けの日差しの下、被害の爪痕があらわになった。市内の道路は泥まみれで、住民が朝から片付けに追われた。いまだ孤立状態の民家もあり、先行きに不安を募らせる。被災地を歩き、住民の声を聞いた。 (取材班)

 雲南市掛合町多根の民家では、散乱した部屋を前に家人の農業、小畑稔さん(76)が脱力した様子で立ち尽くしていた。

 12日正午ごろに裏山が崩れ、土砂が台所や居間に押し寄せた。妻に「山から濁り水が出てきた」と言われて避難した後、崖が滑り落ちてきた。土砂崩れは初めての経験。「濁り水になったら気をつけよう、と夫婦で意識していてよかった」と胸をなで下ろした。

 市内では12日、三刀屋川の支流があふれ、三刀屋町内の国道54号が一時冠水。周辺の道路や民家も水に漬かった。

 国道沿いに暮らす農業、上代敏江さん(86)は午前8時半から片付けに励んだ。自宅の床下まで水が迫り、植木鉢が流され、車庫のシャッターが破損した。それでも「(土石流に襲われた静岡県)熱海ほどの被害ではなかった。まだ助かったのかもしれない」と気持ちを切り替えた。

 近くの三刀屋郵便局でも朝から清掃作業が続いた。板倉孝夫局長(50)は「災害はどこか人ごとのような気がしていた。自分のこととして考えていければいけないと思った」と気を引き締めた。

 ライフラインも寸断された。13日午前9時時点で、浄水場が機能不全となるなど、三刀屋、掛合、吉田、木次の4町の一部で335戸が断水した。

 避難所兼給水場の一つ、鍋山交流センター(三刀屋町乙加宮)では、朝から地区の住民がペットボトルを抱えて水をくみに訪れた。

 延べ45人の避難者を見守った、センター長の秦美幸さん(79)も被災者の1人。センターから4キロ先にある自宅への道が土砂でふさがった。孤立状態の自宅に妻と息子、孫が取り残されており「病気の妻が特に心配だ」とつぶやいた。

 島根県奥出雲町へ向かう国道314号の通行止め区間にある国民宿舎・清嵐荘(吉田町川手)では、宿泊客が足止めされた。

 施設は避難所にもなっており、斉藤慶介総支配人(47)は「できることはやろうと心構えはあったが、いざ現実に起きてみると、何からしてよいのか分からず慌てた。どのようにしてお客さまの不安を和らげるか、考えていきたい」と腹をくくった。