子育て・仕事・音楽。ふるさとで調和するやさしい暮らし

「子育てをするなら、やっぱり島根がいい」―。遠距離恋愛を経て結婚した渕上祐典さん(29)と令菜さん(29)が選んだのは、二人の出身地・浜田市での新しい暮らしでした。

「島根に帰ってきたら」

 祐典さんは江津市の建設会社に務め、フルートが得意な令菜さんは、進学で東京に出て、都内の楽器販売会社に就職していました。建設会社、楽器販売会社とも広島県内に支店があり、一時は新生活の拠点として広島も選択肢に挙がりました。ただ、令菜さんが母親に相談すると「広島に住むくらいなら、島根に帰ってきたら」と提案がありました。

 「母は東京から島根に嫁いできた経験があり、知らない土地で子育てをする大変さを知っていたんです。私も知り合いがだれもいない中で、仕事と子育てを両立させることに少し不安があったので、その気持ちを理解して、帰郷を勧めてくれたのかもしれません」と、令菜さんは振り返ります。

 2021年に結婚し、二人は故郷で暮らし始めました。長女の綾乃ちゃんも生まれ、令菜さんの実家近くに新居を構えました。頻繁にお互いの両親が行き来し、二人が仕事や用事で忙しいときには、綾乃ちゃんの面倒を見てくれます。

祐典さんは「広島で暮らしていたら、もっと大変だったと思う。頼る先がない中で、孤独を感じていたかも。何かあればすぐに駆け付けてくれる環境は本当にありがたい」と、感謝の言葉を口にします。

音楽活動も継続

令菜さんが続けていたフルート演奏も、島根で形を変えて継続できています。県西部の奏者らでつくる楽団「ハイブリッド・ウインド・オーケストラ」に所属し、江津中学校などで吹奏楽部の指導を行っています。この楽団には多くのUターン・Iターン者が所属しています。

「地元にも音楽の経験を活かせる受け皿があり、子どもたちに音楽の楽しさを伝えられるのがうれしい。今の生活は、子育て・仕事・音楽のバランスがちょうどいい」と語る令菜さんの表情は晴れやかです。

祐典さんも「地元で働きながら、家族と一緒に過ごせる時間がもてる。娘の成長を間近で見られるのが本当に幸せ」と話します。休日には家族で浜田市や益田市の公園に出かけたり、両親と一緒に食卓を囲んだりと、自然なかたちで世代を超えた交流が生まれています。

 仕事、子育て、そして自分のやりたいこと。そのすべてを無理なく両立できる場所として、「ふるさとは理想的な場所」だと二人は感じています。

 

 

渕上さんの大切な人

渕上祐典さんの母のゆかりさん(左)、父の徳博さん(右)

 

祐典には自由に生きてほしいので、進学や就職については、あまり「こうしてほしい」とは伝えてきませんでした。本人も自分で決めるタイプなので、自分の中で方針を決めてから「ここを受けようと思う」と報告があるくらい。

でも、浜田で家庭を構えてくれて、うれしいです。祐典も令菜さんも、地元で知り合いが多く、生活しやすいと感じていると思います。何より孫が近くにいることが、私たちにとっては一番です。

PROFILE
渕上 祐典さん/広島県➤浜田市
渕上 令菜さん/東京都➤浜田市

祐典さんは1995年、令菜さんは1996年の生まれで、ともに浜田市出身。江津高校の同級生。祐典さんは広島工業大専門学校に進学し、今井産業(江津市)に就職。令菜さんは武蔵野音楽大から山野楽器(東京都)に就職し、銀座本店でフルート売り場を担当。二人は浜田市の成人式で再会し、交際に発展した。浜田生まれの長女・綾乃ちゃんが「生粋の浜っこになるのがうれしいです」(令菜さん) 

(写真:七咲友梨)

出雲市にUターンした野井さんの話はこちら
海士町にUターンした大脇さんの話はこちら

【しまねのお仕事・住まい探しや移住支援制度、各種イベント情報など、Uターン・Iターンしたい皆さんに役立つ情報を紹介するポータルサイト「くらしまねっと」はこちら

【県外の相談窓口はこちら

ふるさと定住・雇用情報コーナー
東京 TEL:0120-60-2357
大阪 TEL:0120-70-2357
広島 TEL:0800-100-6435