心の距離の近さや優しさが今では心地いい

「日本の美しい原風景が残る島の自然や暮らしが好き。日々癒されて生活できるのって最高だな」。

昨年、生まれ育った島根県海士町に戻ってきた大脇恵利菜さん(38)。「なにもない田舎がコンプレックス」で、中学卒業後に島を離れた彼女の思いを変えたのは、オーストラリアへの留学がきっかけでした。

都市生活への憧れ

大学進学を目指し、松江の高校に進学。「テレビで見る都市部のキラキラした世界がまぶしくて、島を離れました。長崎の大学を卒業して就職し、名古屋や神戸で憧れていたきらびやかな都市生活を楽しみました」。

20代後半の時には、松江に移って働いていましたが、5年前の新型コロナウイルスの影響で仕事が激減。新たな仕事に挑戦しながら日々奔走するも、将来への不安や焦りが募っていました。「結婚や出産、経済的な自立とか、周りに評価される生き方に価値を感じていました。でもうまくできない自分がいる。そんな自分が苦しかったんです」

迷いの中で頭に浮かんだのは、子どもの頃に憧れた留学。思い切って半年間、オーストラリアに渡ったことで、人生が大きく変わります。

「向こうの人たちは役職や年齢、性別に捉われず、ありのままの私を受け入れてくれる安心感を覚えたんです。誰がどんな格好でも気にしない。無理に自分をつくらなくていいし、まわりの評価なんか関係ない。地位や名誉、経済力といった豊かさじゃなくて、心の豊かさが大事なんだなって」

日本について質問してくれる現地の人々が多かったが、うまく答えられない経験から、日本の歴史や自分自身のルーツに興味を持つように。「日本は古くからの歴史があり、自然がそのまま残っている国なのに、自分は何も知らない。そう思った時、ようやく島の豊かさに気づいて。価値観も変わったし、帰ろうかなって思ったんです」

自宅近くでキンカン摘み。母と娘で触れ合う時間も大切にする

 

島の豊かさを実感

生まれ育った海士町へ戻り現在は両親、祖父母と暮らす。隣の島にある西ノ島町観光協会で観光案内などのアルバイトをする傍ら、ピラティスのインストラクターとしても活動。民謡を習うなど、地元の伝統にも触れ、充実した日々を過ごしています。

郷土に伝わる伝統民謡で使用する小道具

「たまに仕事で島外に出かけることがあるんですが、なんでも便利な反面、寂しさを感じるんです。知り合いばかりの島ではみんなが挨拶してくれて、世話を焼いてくれて。そんな心の距離の近さや優しさが今では心地いい。大好きな自然に囲まれ、家族がつないでくれた色々な縁で私が暮らせていると思うと、心がほっとします。ないものを追いかけるよりも、ずっと前からそばにあった安心感が何よりの幸せ。これから、仕事とかで一時的に島を離れることがあると思うんですけど、帰ってくる場所は絶対ここって決めています」

大脇さんの大切な人

祖父の照彦さん(左)、祖母の光子さん(右)

都会に憧れて、若い人たちは島から出ていくことが多い中で、帰って来てくれてうれしいですね。すぐ顔が見られる近くにいることは安心感につながるし、足が悪くなったわしらの世話をしてくれてすごい助かっています。

海士は若い人がたくさん入って来て、いろんなことに挑戦しています。帰ってくる人が増えるように、孫にも若い力で頑張ってほしいですね。

 

PROFILE
大脇 恵利菜さん/兵庫県➤海士町

1987年島根県海士町生まれ。中学校卒業と同時に島を離れ、松江の高校に進学。長崎の大学を卒業後はブライダル業界に就職し、名古屋と神戸で勤務した。20代後半で松江市に移住。ブライダル業界で働いていたが、新型コロナウイルスをきっかけにパーソナルトレーナーとしても活動。オーストラリアへの留学を経て、地元海士町に帰郷し、現在は西ノ島町観光協会のアルバイトをしながら、ピラティスのインストラクターとしても活躍している。 

(写真:七咲友梨)
 

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