中海・宍道湖・大山圏域の未来を担う人材の育成を目的にしたセミナー「山陰まんなか未来創造塾」が3月、同実行委員会の主催により、松江商工会議所で開催されました。プロ野球「東北楽天ゴールデンイーグルス」の立ち上げに尽力した仙台大学教授の池田敦司氏(一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)専務理事)が、球団創設の秘話や苦労話を披露した。
以下の記事は、2026年3月10日(火)に開催された、令和7年度山陰まんなか未来創造塾の内容を採録したものです。
私は西武百貨店に就職し、マーケティング業務に関わっていました。当時は流通の花形が百貨店でしたが、時代の流れとともに親会社がスーパー、ショッピングセンター、コンビニ、家電量販店と次々に変わる、いわば栄枯盛衰の世界を経験しました。その後、地元の仙台に戻り、楽天イーグルスの創設に関わる機会に恵まれました。結果として、プロ野球の世界で12年ほど、球団副社長、そして関連会社の社長など、さまざまな役割を担うことになりました。その後は人材育成に携わりたいと思って仙台大学へ。現在は大学スポーツ協会(UNIVAS)で大学スポーツ改革にも関わっています。
◆ 「ゼロからの創設」
楽天イーグルスは、球団合併問題が巻き起こった2004年に生まれました。近鉄とオリックスの合併が浮上し、それまで12球団で回してきたプロ野球が突然11球団になるかもしれないという危機的状況のなかで「新球団をつくる」という流れが一気に動き出しました。球場がない、選手、コーチ、スタッフがいない、組織もない。「ゼロどころかマイナスからのスタート」といっていい状況でした。特に厳しかったのは時間の制約です。翌年の開幕には、当然ながら試合ができる球場と組織が必要です。つまり約5カ月で、普通なら数年かかる球団創設の準備をすべて終えなければならなかったのです。そこで一番大事にしたのは、「とにかくやってみる」という姿勢でした。
試合の勝ち負けではなく、訪れたら非日常のエンターテインメントを楽しめるボールパークを目指し、ホーム戦全試合イベント化をテーマに掲げました。面白い職員を何人か集めて「面白いことを考えよう」といろんな案を出しました。夏祭りみたいなものを企画したり、球団名にちなんで鳥のワシのショーをやったり、プロレスもやったりしましたね。
◆ プロ野球が地域にもたらす影響
球団が地域に存在することの効果は、経済だけにとどまりません。メディア露出による都市の知名度向上、周辺地価の上昇、交流人口の増加、子どもたちの体験機会の増大、高齢者・家族層の外出機会の増加などです。仙台でも、球場周辺のマンション建設が進み、商業施設が増え、まさに「球団が街をつくる」現象が起きました。
◆ 成功の五つのコンセプト
球団の会長であり、親会社の社長でもある三木谷浩史が掲げる成功の五つのコンセプトを紹介します。まずは「常に改善、常に前進」。一人一人が物事を達成する強い意思をもつことが重要です。二つ目は「Professionalismの徹底」で、勝つために人の100倍考え、自己管理の下に成長していこうとする姿勢が必要です。三つ目は「仮説→実行→検証→仕組化」です。仕事を進める上では具体的なアクション・プランを立てることが大切です。四つ目は「顧客満足の最大化」です。サービスを提供するため、傲慢にならず、常に誇りを持って「顧客満足を高める」ことを念頭に置くことが大事です。最後は「スピード!!スピード!!スピード!!」。重要なのは他社が1年かかることを1ヶ月でやり遂げるスピード。勝負はこの2~3年で分かれます。
こうしたことを大事にさまざまなことに挑戦しました。動物に触れ合うイベントでは最初、馬を球場に入れたんです。その後、球場外で飼育もしましたが、結構大変で。飼育小屋も狭くて大変でした。この失敗を生かして、動物園と連携して移動動物園を定期的に開くようにしたら、これは恒例企画に育ってくれました。球場全体をエンターテインメント空間に変えていく努力をした結果、野球を知らない人でも足を運んでくれるようになり、結果として観客が増えていきました。こうしたことを徹底していると、たとえゼロからでも、むしろマイナスからでも道は開けます。そして、仕事の壁にぶつかったときこそ、「やってみて、改善して、またやる」という循環を続けることが突破力につながると信じています。
講演後の立食交流会では、講師と参加者が直接言葉を交わしながら講演内容を深め、参加者同士も活発に交流しました。
仙台大学教授/元楽天野球団取締役副社長/元クリムゾンフットボールクラブ(ヴィッセル神戸)代表取締役社長/一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)専務理事
西武百貨店で「CLUB ON」開発など革新的な販促を主導後、2005年楽天イーグルスの創設に参画。球場運営権の取得やボールパーク構想を推進し、初年度黒字化と日本一への基盤を築く。その後ヴィッセル神戸社長を歴任し、野球・サッカー両界で経営を成功させた稀有な実績を持つ。現在は仙台大学教授、大学スポーツ協会専務理事として組織変革を牽引。ゼロから既成概念を打ち破ってきた「突破力」の体現者である。
岐阜県飛騨市で里山や空き家など地域資源を生かしたツーリズムを展開する(株)美ら地球(岐阜県飛騨市)CEOの山田拓氏が、地方部でのインバウンドツーリズムの可能性の大きさについて講演しました。
山陰まんなか未来創造塾 毎年、中海・宍道湖・大山圏域の企業・団体・自治体の中堅社員・職員等を対象にした合同セミナーを開催しています。多彩な分野から講師を招き、受講生がさまざまな経験・理論を学ぶことで視野を広げ、企画力・創造力を磨いてもらうとともに、相互の連携意識の醸成、人的交流の推進を図っています。











