江の川沿いの堤防工事の現場。重機を使い、土を盛り固める作業が続く=江津市松川町八神
江の川沿いの堤防工事の現場。重機を使い、土を盛り固める作業が続く=江津市松川町八神

 2020年7月14日の江の川氾濫で、江津市と島根県川本、美郷両町の住家78棟が浸水してから1年たった。流域の一部では治水対策の堤防整備や河道掘削が進んだものの、用地買収が遅れて着工できない地域もある。18、20年と2度浸水した重点15地区のうち11地区では国や県と地元が協議中で、対策は道半ば。12日にも激しい雨に見舞われ、流域住民は一日も早い対策完了を願う。 (佐伯学)

 20年の氾濫後、国土交通省は川沿いの浸水エリアの江津市松川町八神で堤防を約400メートル延伸。これにより、総延長2キロのうち1キロが完成した。水位上昇を抑えるため、同市桜江町大貫|田津間の約6キロで行っていた河道掘削や樹木伐採は9割超が完了した。

 本流の増水で行き場を失った水があふれる「バックウオーター現象」が起きた支流の八戸川では、県が同市桜江町内の堤防を1・8キロにわたり3メートルかさ上げ。土砂崩れや落石で通行止めとなった22カ所の道路復旧工事も大半が終わった。

 一方、流域最多の32棟が漬かった桜江町川越では、堤防新設に向けた用地買収手続き中で、国交省は氾濫時に水の侵入口を大型土のうで応急的にふさぐことを決めた。川本、邑南両町の3カ所も同様の方法でしのぐ方針。12日の大雨では洪水警報が出て、住民は危機感を強めた。川本町川下の瀬尻亨さん(78)は「応急措置ではなく、住民が望む対策を早く実現してほしい」と注文した。

 国交省と県、流域市町が対策の加速を目指し、4月に発足した「江の川流域治水推進室」が手掛ける重点15地区は、堤防新設などが決まった4地区を除き、住民を交え、宅地のかさ上げや集団移転を絡めた計画策定の途上にある。

 大久保雅彦室長は「早急に計画をまとめ、安全を確保したい」と話し、21年度末までに全地区の方針を決め、22年度以降速やかに事業着手したい考えだ。