赤堀正卓氏
赤堀正卓氏

「終活」に参入する企業・自治体の最前線
 誰もが平等に満足な支援を

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西懇話会の定例会が10、11の両日、浜田、益田両市であった。「終活読本ソナエ」編集長の赤堀正卓氏(53)が「『終活』に参入する企業・自治体の最前線」と題して講演。終活ビジネスや行政の役割を説明し、経済格差の影響を抑えるための支援の必要性を説いた。要旨は次の通り。

 人生の最期に向け、生前に葬儀や相続の手配を済ませる「終活」という言葉は2000年後半に登場するようになった。災害情報を通じて死を身近に感じるようになったこと、50歳で結婚未経験者の割合が30年前と比べ男性が約20%、女性が約10%上昇し、近くに親族がいない人が増えたことを背景に言葉が広がった。

 終活を考える際、「人に負担をかけたくない」という心理が働き、葬儀を安く、簡素に済ませようとしがちだ。大人数の葬儀を避けるコロナ禍の影響も拍車をかける。

 終活は1人ではできず、そこに目を付けて事業参入するベンチャー企業が増えた。IT技術を用いて安価に葬儀の手配や見積もりをするマッチングビジネスや、遺品整理サービスを展開する。銀行、証券会社が次々と出資し動きは過熱した。ある流通大手が始めた葬儀会社紹介事業では、布施価格の目安を提示したため、宗教上の問題があるとして全日本仏教会から反発を受けた。

 現状は低所得者が満足に終活支援サービスを受けられないのが問題だ。民間に任せきりにするのではなく、行政が腰を上げたケースもある。神奈川県横須賀市は2015年、1人暮らしで身寄りがなく、経済的に困窮する人向けに葬儀や納骨の支援をする事業を開始した。本人が提出した本籍や緊急連絡先、葬儀や遺品などの情報が書かれた書類を基に、市が葬儀社や墓石業者と連携する。今後、全国の自治体でも求められる取り組みだろう。

 終活支援は経済事情に関係なく、誰でも平等に受けられるべきだ。市場原理のみで進めるのはよくない。死が無機質なものにならないよう宗教、文化も大事にしてほしい。 (宮廻裕樹)