「あの『味ぽん』がシートマスクに?」と予想外のタッグに驚きの声もあがっていた、ミツカン『味ぽん』とSaborino『サボリーノ 目ざまシート』のコラボ。食品資源に新たな価値を与える“アップサイクル”を通じて食品会社と協業し、サステナブルな社会の実現を目指す『あますことなくいただきマスク』の第1弾となる取り組みだ。調味料を生み出す過程で生まれてしまう残渣(ざんさ)を、美容に活用するという従来の常識を覆すこのアイデアには、一体どんなストーリーがあるのか。人にも環境にも優しい『味ぽん』シートマスクの誕生秘話について、BLCカンパニーで『Saborino』の企画担当をしている板倉明日香さんに話を聞いた。
【写真】”ぽん酢”の残渣がコスメに…醤油粕発酵液ができるまでの道のり
■『味ぽん』を選んだ理由、成分で選ぶ時代だかあこその”異種”選択
「あますことなくいただきマスク」の取り組みは、2024年の「サボリーノ」ブランドリニューアル時に掲げた「環境への取り組みに注力したい」という想いにあったという。
「世界的に見ると、環境に対する取り組みが購買行動の決め手になっている国もあるなかで、日本は違うということは理解しているが、環境問題について考える機会は増えていく一方であると個人的に感じていました。ブランドとして10年続いたタイミングで「何かひとつでも気づきを与えるような取り組みがしたい」という想いから、意外性のある食品メーカーさんのお力を借りることにしました。商品名だけで「あれね!」と想像がつく食品と面白いコラボすることにより、その裏に隠された私たちの気持ちにも気づいていただけるきっかけになったらいいなと」
化粧品原料のパートナー探しでは、原料会社である株式会社ファーメンステーションを通じて、ミツカンと出会う。数ある候補から『味ぽん』が選ばれた理由は、その圧倒的な知名度と「効果」の裏付けだった。
「実をいうと、今回使用している醤油粕以外にも、いくつか原料の候補をいただいておりました。。複数の候補から試作した結果、?油粕の発酵液には保湿作用に加え、バリア機能を向上させる効果もあることがわかりました。栄養素や美容成分を念頭に置いて素材を選定していたわけではなかったので、嬉しい結果でしたね」
■「味ぽん=醤油」シートマスクとかけ離れた”食べたい香り”を”楽しめる香り”にする試行錯誤
しかし、選定にあたって葛藤もあった。「味ぽん=醤油」というスキンケアコスメとはかけ離れたイメージだ。
「『味ぽん』って醤油なの?」と思われる方もいると思うので、正直なところ悩みました。原材料名を見ていただくとわかる通り、ポン酢は醤油や果糖ぶどう糖液糖、柑橘果汁などで作られています。今回使用している醤油粕は、“ポン酢を作る”よりひとつ前の“醤油を作る”段階で生まれるものなので、お客様が『味ぽん』と結びつけられるか不安もありました。でも、『味ぽん』はみなさんのご家庭に1本はあるように、最終的には『味ぽん』が持つ家庭的な馴染み深さと、愛されるブランド力に懸けることにしたんです」
納得できる製品づくりを優先し、発売時期を定めずに走り出した。第1弾商品の『味ぽん』コラボは、約2年の開発期間を費やしたという。「解像度の高い『味ぽん』の共通認識があるゆえに、そのイメージを化粧品として体現する難しさを強く感じた」と板倉さん。
「苦戦したのは、酸っぱい柑橘ではない香りで『味ぽん』を表現することです。正統派なポン酢をイメージして作ると、どうしても“食べたい香り”になってしまって。『味ぽん』でありながら“顔に乗せて1分間、楽しんでいただく香り”にするために、チームで何度も相談しました」
『味ぽん』らしさと使い心地を両立させるために、何度も重ねられた試行錯誤。その末でようやく辿りついたのが、?油の原料である大豆のまろやかさと発酵の要素を組み合わせて落としこんだ“ほんのり発酵粕の香り:やさしく肌になじみやすいまろやかな香り”だ。発売情報が解禁されるやいなや、SNSやイベントで「どんな香りなんだろう?」と話題騒然だったが、実際に商品を手にした顧客からの反応は上々だという。
「たいていの肌トラブルの元は乾燥であるとも言われていて、ちょうど年間で最も乾燥するこの時期に発売することができたことは良かったです。醤油粕発酵液は乾燥で肌がピリピリしやすい方とも相性が良いと思うので、年齢や肌質を問わず手に取っていただけたら嬉しいですね。
市場では成分を肌悩みと結び付けて商品を選ぶトレンドが先行していますが、それを理解しつつも、サボリーノの強みは12年かけて培ってきた“感性的なところ”にあると思っています。成分の良さだけで押し出すのではなく、ブランドへの共感や社会的な取り組みを知っていただける機会に繋げたい。そこから今回の“醤油粕発酵液”に興味を示したり、結果的としてサボリーノや『味ぽん』の魅力、社会的な取り組みの存在に少しでも気づいていただきたい気持ちです」
■日常のゆとりが”社会貢献”へ 成熟したブランドが背負う”美の責任”
2024年にシリーズの象徴アイテムであるフェイスマスクをリニューアルした同ブランドは、発売10年目を越えた今、ブランドとして「“がんばらなくても いいジブン”のコンセプトを伝え直していきたい」という課題も抱えているという。
「私たちは、洗顔やスキンケア、下地を塗る手間を省けるシートマスクやトリートメントが必要ないオールインワンシャンプーなど、手段におけるステップの省略を通して「がんばらなくても いい」を長いこと商品で体現してきました。
正直なところ、サボリーノという名前ゆえに、一部のお客様からは「頑張っているのに、サボっていると言われているような気がする」といったお声をいただくこともあります。でも、実際にブランドがお伝えしたいのは、「あなたは十分頑張っているから、ちょっとだけ息抜きの時間を一緒に作ってみませんか」ということなんですよね。
仕事・家事育児はもちろん、趣味の推し活だったり、ペットのお世話だったり、普段からめちゃくちゃ頑張っているかたが、世の中にはたくさんいらっしゃいます。そんな毎日を送っているみなさんに「簡単に賢くケアできるアイテムがある」とちょっとでもわかっていただけたら、ブランドとして意義があると思っているんです」
同ブランドの認知度についても、社内では「まだまだ上を目指していける」という認識だという。新たなお客様との出会いを求め、SNSを中心としていたコミュニケーションだけでなく、TVCMへもチャレンジ。既存のユーザーとのコミュニケーションも見直し、フェイスマスクのパッケージには「1分でスキンケア完了!」の表記を追加した。
ブランドのリニューアルが、美容家のMEGUMIが「毎日のシートマスク使用」を提唱したタイミングと重なったこともあり、シートマスクの需要は高まっているが、そこに甘んじず、社会的な取り組みにも前向きな姿勢だ。
「そもそもシートマスクって、顔に貼り付けて時間が経ったら捨てるじゃないですか。そういう商品を作って買っていただくことを生業にしている私たちだからこそ、アップサイクルなどの社会的な取り組みにも、率先して向き合っていくべきだと思うんです。現時点では、製品の一部にバイオマスプラスチックを使用するなど、出来ることから一歩ずつ行動に移しています。
サボリーノは肌をきれいにするため”だけ”のものではなく、ステップを省略できたり、時間を短縮できたり、様々な理由で選んでいただいているかと思いますが、“サボリーノを選ぶ”ということが、巡り巡って自分に返ってくるような仕組みを作れたら、もっと良い価値をお客様に届けられるブランドになれるはず。ブランドとして成熟してきた今なら、よりよい社会を目指して、企業的責任を果たしていけると確信しています」
(取材・文/坂井彩花)
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