ドイツ国政を約16年率い、世界的に影響力を発揮してきたメルケル首相が26日の総選挙後の次期政権発足に伴い引退する。軌跡を追った。
民主化団体の狭い事務所を訪れたのは控えめな女性だった。「話を聞きたい」と告げ、物理学者だと自己紹介した。1989年12月、旧東ドイツの首都、東ベルリン。前月には東西を隔てたベルリンの壁が崩れ、国内は騒然としていた。この日、周囲に目立たない女性と映ったのは35歳のアンゲラ・メルケルだった。
「当時は革命の最中で、大勢が見学に来た。ただ一度きりが多く、彼女もそうだと思っていた」。民主化団体「民主主義の出発(DA)」の事務所でメルケルに応対したアンドレアス・アーペルト(63)が打ち明ける。...