松江市東出雲町に本社を置く農機メーカー三菱マヒンドラ農機が事業から撤退し、会社を解散すると発表しました。島根を代表する企業の解散で、新聞は号外を発行するなど連日大きく取り扱いました。今回はこのニュースの取材に当たっている、政経部の多賀芳文記者が背景や地域に与えた影響を解説します。


【以下概要】

Q.松江市東出雲町にグループを含めて複数の拠点を持っていた。地域にとってはどんな存在だった?

 三菱マヒンドラ農機は従業員がグループ全体で970人このうち島根県内在住者は410人います。国内農機メーカーの売上規模では4位、シェアでは5%と言われています。島根県内ではグループ以外でも74社が部品供給などを担い、企業城下町を形成しています。農機メーカー業界でも大きな存在感を持つ、島根を代表する企業と言えます。

Q.なぜ松江市東出雲町に立地しているのか?

 三菱マヒンドラ農機は、1914年創業の佐藤商会をルーツに持っています。脱穀する機械を発明した東出雲町出身の佐藤忠次郎が興した会社です。1945年に佐藤造機となりますが、70年には会社更生法を申請。負債額は190億円だったということです。1980年代に三菱グループ入りして三菱農機となり、2015年にはインドを代表する企業、マヒンドラ社が経営参画し、今に至ります。

Q.なぜ100年企業が解散することに?

 農業従事者の減少や高齢化などで農機の国内市場が大きく縮小しました。今後も回復の見通しが立ちにくいことが大きな要因です。三菱マヒンドラ農機は売上高の8割を国内に依存していて、グループの売上高は1995年11月期の862億円をピークに、2025年3月期には半分の376億円に低下しました。直近の3期は赤字決算となっています。

Q.マヒンドラの経営参画で海外展開も行った?

 活路を求めたアメリカで金利の高止まりや関税措置の影響を受けて出荷台数が大きく減少しました。事業継続に向けてM&Aも模索したようですが、業況の見通しが不透明感を増す中で買い手が見つからず、2025年頃から解散を本格的に検討したとされています。

Q.従業員やユーザーの今後は?

 従業員約970人のうち約50人は、今後少なくとも10年程度とする部品供給や保証のための新会社に移る計画です。ですからユーザーは向こう10年ほどは製品の保証を受けることができそうです。残る900人超は退職となります。

Q.退職者の新たな仕事は?

 国や島根県、松江市などが連携して再就職の支援をしています。各機関団体の相談窓口には、市内外の延べ100社から求人の問い合わせがあったということです。今はハローワークに窓口を一本化して、求職者とのマッチングなどを進めています。

Q.グループ以外への影響は?

 取材した関連企業の経営者から「ついに来たか」といった声や、「前々からそういった状況は察していた」という声を聞くことが少なくありませんでした。島根県の丸山達也知事は雇用や経済への影響を最小限にとどめるとしています。具体策として、取引先企業の事業継続支援を中心に総額2億1500万円を用意しています。売上減に対応する融資枠を16億円に倍増して、新規の事業展開や設備投資を後押しし、専門家の派遣なども組み合わせながらバックアップします。

Q.記者のニュースの受け止めは?

 退職する従業員のフォローはもちろんですけれども、関連企業については、今後の事業の軌道修正が求められる現実があります。そちらの対応は一朝一夕ではなく、中長期的なフォローが必要になっていきます。今後長い目で見て、支援策が実効性あるものなのかどうか、取材の現場としてもしっかり向き合い続けていきたいと思います。