西田千太郎日記
西田千太郎日記

 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』の主人公のモデルとなったのが、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)。その親友である西田千太郎(1862~97年)の教育者としての業績に光が当たっている。放映前から続いている有志による旧居の保存活動も軌道に乗っているようだ。

 研究者らの間で西田が重要人物であるのに変わりはないが、ドラマで西田をモチーフにした「錦織友一」を俳優の吉沢亮さんが演じたことで、一般の人により身近な存在になった。

 研究だけでなくドラマの成立に影響を及ぼしたのが、30代半ばで早世した西田が青年時代から亡くなる直前まで続けた日記であることは言うまでもない。日記はちょうど半世紀前の1976年6月、島根郷土資料刊行会によって世に出された。

 日記は公表を前提に書くものではない。偽りのない描写、感情の吐露があり、だからこそ、後世で歴史的資料として重宝されることがある。刊行された『西田千太郎日記』は親族による序文にあるように、後々他人の不名誉になると判断されたことは削除された。今風に言うと「バズる」内容ではないかもしれない。

 だが、大事なのはそこではない。西田が日々をつづった最初となる1879(明治12)年9月1日は当時、社会問題だった「虎列拉(コレラ)」の話で始まる。市井から見続けた松江の生活史がそこにあり、日記を片手にかいわいを散歩してみたくなる。(万)