「第4回日本ホラー映画大賞」受賞者と審査委員による記念撮影
「第4回日本ホラー映画大賞」受賞者と審査委員による記念撮影

 ホラージャンルに特化した国内唯一の一般公募フィルムコンペティション「第4回日本ホラー映画大賞」の授賞式が5月30日、東京・グランドシネマサンシャイン池袋で開催された。授賞式後に行われたディスカッションでは、令和の新たなホラー映像作家の発掘・支援を掲げる「日本ホラー映画大賞」の今後のあり方についても熱い議論が交わされた。

【画像】大賞を受賞した山城研二監督ほか、この記事に関連する写真

 副賞として応募作『chorus』のリメイク版、または完全オリジナルによる長編映画の監督権が与えられる大賞には、山城研二監督の短編映画『chorus(コーラス)』が選ばれた。これまで同賞からは『みなに幸あれ』の下津優太監督や、『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の近藤亮太監督らが商業映画監督として羽ばたいている。

 授賞式には、審査委員長を務めた映画監督の清水崇と、6人の審査委員――タレント・俳優の堀未央奈、映像クリエイター・監督・声優のFROGMAN、ロックバンド・Base Ball Bearの小出祐介、映画ジャーナリストの宇野維正、作家の道尾秀介、タレント・映画監督のゆりやんレトリィバァ(※リモート)が登壇した。

 小出は、過去3回の開催実績を経て、「商業映画デビューをイメージしやすい作品が増えたと感じました。見応えのある第4回だったと思っています」とコメント。

 FROGMANも、「今後、商業映画監督をやるという前提で言うと、そういう作品に取り組めるであろうと想像できる監督でないと(大賞受賞は)厳しいんじゃないか?」とした上で、「情熱も可能性もある作家さんがたくさんいました。今後、日本ホラー映画大賞はどういう基準で選んでいけばいいのか?技術のインフレが起きて、プロも応募する中で、原石を探さないといけないわけで、今後どういうスタンスで選んでいけばいいのかと、いろいろ課題を感じた」と率直な思いを口にした。

 宇野は、「最近は『お笑いは流行っていない』『演劇は流行っていない』といったミームワードがありますが、ホラーは流行っています」ときっぱり。「第1回、第2回の受賞監督はすでに商業映画の2作目を手掛けており、この賞は確実に実績を残している」と評価した。

 一方で、「では、この物足りなさは何なのか」と問題提起。「日本ホラー映画大賞は素晴らしい賞だし、ホラーも流行っている。だとしたら、何かを変えなきゃいけない」と語り、応募期間の短さなど運営面の課題にも言及した。

 さらに話題は、近年増加している“不条理系ホラー”にも及んだ。

 道尾は、『chorus』と審査員特別賞の『ゴボゴボギュギュ』(澁谷桂一監督)がいずれも謎を残したまま終わるオープンエンドの作品であることに触れつつ、「『chorus』には作者の中に明確な答えや裏設定が存在しているように感じた。表現されていなくても、作り手に答えがあると感じさせる作品のほうが怖く感じる」と評価した。

 これに対し、清水崇監督は、「作者の中に明確なものがあって作る作品もあれば、あえて答えを示さず放り出す作品もある。どちらが良いかは好みによる」としつつ、「最後まで答えを出さず、わけの分からない世界へ観客を引きずり込む不条理系の作品は世界的にも増えている。人類が自然とそうした作品を求めているのかもしれない」と分析した。

 FROGMANも「アニメでも大風呂敷を広げたまま、雰囲気を楽しませる作品が増えている。そうした表現が受け入れられる時代になっているのかもしれない」と語った。

 宇野は、「映画はミステリーよりもサスペンス向きの表現だと思う。作り手に答えがあるかどうかは分からないし、分かる必要もない」と持論を展開。その上で、「世界的に見ても、ある程度の予算以下の作品の“サプライズヒット”というのはホラーでしか出ていないんです。世界中でホラーが流行っていることと、この日本ホラー映画大賞がどうリンクしていくのかが課題」と語った。

 ゆりやんも、「私はオバケも好きだけど、『なんやこの世界!?』『なんやこの人たち!?』みたいな不条理な作品が好き」と告白。今回の候補作にも、そうした不条理ホラーの良作が多くあったと振り返った。

 堀はこうした傾向を踏まえつつも、“ギトギト・グチャグチャ”のホラーが好物だと明かし、「もっと(応募作が)スプラッターでにぎわってほしい」と個人的願望を語った。

 今回、“ゾンビもの”や“フェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)”といったジャンルの応募作が少なかったことについて、宇野は「もしかしたら、ゾンビものやモキュメンタリーは(ホラーではない)別ジャンルという認識がされているのかも…」と指摘した。

 最後に清水監督は、「どんなホラーでも受け止めるつもりではいるので、自由度高くやっていただきたい。『こんなホラーがあったか!』というのも見てみたい」と呼びかけた。

 ホラー映画の盛り上がりが続く中、次はどんな才能が現れるのか。新たな映像作家の登竜門として、「日本ホラー映画大賞」が今後どのような才能を発掘していけるのかにも注目だ。