未舗装の駐車場が点在する松江しんじ湖温泉街=松江市千鳥町
未舗装の駐車場が点在する松江しんじ湖温泉街=松江市千鳥町

 旧市時代を含め、20年10カ月の長きにわたって松江市長を務めてきた松浦正敬氏(72)が、4月の任期満了に伴って退任する。県都のトップとして市町村合併や松江城天守の国宝指定など数々の実績を残してきた半面、まちづくりは道半ばだ。次期市長選(4月11日告示、18日投開票)を前に、9回続きで残された課題を追う。

 

 国宝に指定された松江城天守のお膝元に位置する松江市千鳥町の松江しんじ湖温泉。目抜き通りに足を踏み入れると、未舗装の駐車場が点在し、くしの歯が欠けたような光景が広がる。

 約700メートルの通り沿いに最盛期は14軒あった旅館・ホテルが6軒まで減少。特産のシジミのPR施設だった宍道湖しじみ館も昨年6月に閉館した。新型コロナウイルスの感染拡大による旅行控えの影響もあり、温泉街に逆風が吹く。

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 旧松江市が宍道湖北岸を埋め立て、この一帯に旅館団地を造ったのは東京五輪が開かれた1964年のことだった。長らく松江温泉と呼ばれてきた温泉街を、現在の松江しんじ湖温泉に改称したのは2002年。湖畔の中心市街地に湧き出る天然温泉という強みを生かし、全国での知名度を向上させ、伸び悩む宿泊客を増やすことが狙いだった。

 当時、市議会で温泉街の将来像を問われた就任2年目の松浦正敬市長は「天然温泉と湖畔立地の特色を最大限に生かしたい」と意気込んだ。大胆な発想と手法で観光のまちづくりを進めてきた故・宮岡寿雄前市長の後を継いだ松浦市長への期待は高かった。

 それから20年。旅館・ホテルの数は6軒で変わらず、宿泊や日帰りの年間利用客数は30万人前後で横ばいのままだ。市は足湯施設や周辺道路の整備、ビル再開発などを手掛けたが、どれも側面支援で起爆剤にはなり得なかった。

 複数の旅館関係者によると、市町村合併で旧玉湯町の玉造温泉が市域に加わると、松江しんじ湖温泉は2番手の扱いになり、情報発信は後手に回った。年間利用客数は60万人の玉造温泉に2倍の差をつけられた。

 さらに19年、市は活用策が見いだせないとして宍道湖北岸エリアの観光拠点の一つだった同市西浜佐陀町の英国式庭園・松江イングリッシュガーデンを民間に売却した。

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 業界紙が毎年発表する人気温泉地ランキングが現状を物語る。全国の旅行会社社員などの投票で、玉造温泉が近年20位以内をキープする一方、松江しんじ湖温泉は19年に初めて93位に入った以外はランキング外が続く。

 「資源としては玉造温泉と大差ないのに、知名度がなく、競争力もない。これまで何をしてきたのか」と、松江しんじ湖温泉旅館協議会の植田祐市会長(56)は自戒を込める。

 松江が京都市、奈良市と並んで国際文化観光都市になってから今年で70年を迎えた。立地に恵まれた天然温泉の潜在力をいつになったら引き出せるのか。観光資源を生み出すだけでなく、いかに伸ばすかを考えなければ、観光都市の看板は色あせる。

 

 =14日からは山陰総合面に掲載=