建て替え工事が進む松江市役所本庁舎=松江市末次町
建て替え工事が進む松江市役所本庁舎=松江市末次町

 18日投開票の松江市長選で、市役所本庁舎の建て替え事業の見直しを訴え続けた新人の出川桃子氏(43)が敗れた。6万1534票を獲得して初当選した新人の上定昭仁氏(48)は事業に反対しておらず、建て替えは計画通りに進むことになる。ただ、市政運営の在り方に一石を投じた出川氏の得票率は31%に上り、上定氏は市政運営の過程で市民との向き合い方が問われる。 (片山大輔、佐々木一全)

 

 18日午後10時半、出川氏の事務所内のテレビ画面に開票速報が映し出されると、選対本部長の川上大県議が目を見開き「まさか、ダブルスコアとは…」と絶句した。

 出川氏は選挙戦で一貫して庁舎問題を取り上げ「市民不在の政治手法が生み出した象徴的問題だ」と強調。総額150億円の事業の見直しと、施策に多様な市民の意見が反映される仕組みづくりを公約に掲げた。

 主張に賛同する市民有志や子育て世代の女性の支援を得て、街頭の有権者の反応は良く、陣営は開票時まで接戦を予想していた。ところが得票差は2倍以上に開き、川上県議は「既に工事が始まり『終わった問題』として認識されたのだろう」と敗因分析した。

 ■宿題に区切り

 現庁舎の建て替え議論が持ち上がったのは1991年。いったん立ち消えになったが、2015年に市が老朽化と耐震強度の不足を理由に現地建て替え方針を打ち出し、事業の計画立案を進めた。

 これに対し、市民への説明責任が果たされていないとして市民団体が20年夏に署名活動を展開。約1万4千人分の署名を添えて住民投票条例の制定を直接請求し、市議会が否決する経緯をたどった。

 27年春の事業完了を目指し、建て替え工事は1月に始まったものの批判的な声は根強かっただけに、庁舎のある城西地区が地盤の立脇通也市議(69)は「3万人は反対だが、その倍の人は了とした」と力説。「30年の宿題に区切りが付いた」と胸をなで下ろした。

 ■3万426票の重み

 上定氏は現計画に基づいて事業を進める考えを示すが、市議を辞し、庁舎問題を通して市政運営の変革の必要性を訴えた出川氏に集まった3万426票の重みは無視できない。

 記者団に対して19日朝、市民の声が市長や市職員に届かず、情報発信も不足していたと現市政の問題点を指摘した上定氏は「同じことを二度と起こしてはならない」と言及。市民との対話や縦割り行政の解消を通して風通しの良い市政を実現すると強調した。24日の就任後、その言葉通りに実行できるかどうか、市民は厳しい視線を向けている。