線引きで土地利用が制限される松江市内(資料)
線引きで土地利用が制限される松江市内(資料)

 2月下旬の休日、出雲市内で買い物を楽しんでいた松江市西川津町に住む会社員の山本詩織さん(36)は「松江にはなくても、出雲を巡れば欲しいものが見つかる」とほほ笑んだ。

 訪れた先の一つが2016年にオープンした大型商業施設「イオンモール出雲」。テナント数は松江市東朝日町の「イオン松江ショッピングセンター」とほぼ同じ約90店だが、若者に人気のファッションブランドなど島根初出店の店舗が多く入る。

 約2キロ北東にはライバル的存在で県内最大規模のテナント数を誇る「ゆめタウン出雲」が立地。近くには総合ディスカウントストア「MEGAドン・キホーテ出雲店」も店舗を構える。

  ◇  ◇  ◇

 県の統計によると、延べ床面積が1千平方メートル以上の大型商業施設は過去10年間に、出雲市内で24店が進出。松江市の14店を大幅に上回った。

 新規出店が相次ぐ理由の一つは地価の安さが挙げられる。20年度の商業地1平方メートル当たりの地価公示価格は松江市が6万~16万円だったのに対し、出雲市は2万~9万円で差は歴然だ。

 こうした状況が生まれる背景には「線引き制度」の存在がある。松江市は商業地や宅地の開発を促す「市街化区域」(3278ヘクタール)と、農地などを守る「市街化調整区域」(1万4567ヘクタール)を区分。無秩序な市街化の防止と計画的な整備を目指してきた。

 ただ、制約は多く、市民の間では賛否が二分。規制の在り方をどうするべきかという長年の議論を経て、16年12月に松浦正敬市長が「白紙に戻して考える」と述べた経緯がある。

 その後、市は市街化調整区域のうち、駅や小中学校の周辺などで住宅地整備の面積要件を緩和するなど基準の見直しを続けるが、抜本的な議論は進んでいない。

  ◇  ◇  ◇

 岡山県笠岡市のように線引き制度の廃止後も人口流出に歯止めがかからなかった自治体はある。

 一方、産業構造の違いもあり、影響は一概には言えないが、直近5年間の累計で松江市が157人の転出超過(社会減)だったのに対し、宅地造成がしやすい出雲市は2893人の転入超過(社会増)だったという事実もある。

 1968年の新都市計画法に基づき、線引き制度が設けられてから50年以上が経過した。人口減少時代のまちづくりを考える上で、制度廃止もタブー視せず、全市民的な議論を行う時期が来ている。