広島県広島市、平和記念公園「原爆供養塔」
広島県広島市、平和記念公園「原爆供養塔」
セメントのようなもので埋められる細工を加えられた献花用の鉢=18日、広島市
セメントのようなもので埋められる細工を加えられた献花用の鉢=18日、広島市
原爆供養塔前に置かれている献花用の石製の鉢(左下)。撮影した7月6日時点では異常はなかった
原爆供養塔前に置かれている献花用の石製の鉢(左下)。撮影した7月6日時点では異常はなかった
広島県広島市、平和記念公園「原爆供養塔」
セメントのようなもので埋められる細工を加えられた献花用の鉢=18日、広島市
原爆供養塔前に置かれている献花用の石製の鉢(左下)。撮影した7月6日時点では異常はなかった

 広島市中区の平和記念公園内の原爆供養塔にある献花用の石製の鉢が、無断で何者かにセメントのようなもので埋められる細工を加えられ、花も水も入らない状態になっていることが20日までに分かった。鹿児島県鹿屋市の男性(故人)が1963年8月に寄贈したもので、遺族は「とても悲しい。元通りきれいにしてもらいたい」と話した。広島市は対応を検討している。

 

 鉢は縦約55センチ、横約60センチ、高さ約60センチで正面に「献納」と刻まれている。市平和推進課によると、確認できる限り67年まで公園中央の原爆慰霊碑の前にあった。その後、経緯は不明だが、約7万人とされる身元不明や引き取り手のない遺骨が安置されている供養塔の地下納骨室入り口に置かれた。

 市原爆被害対策部調査課は、供養塔周辺を清掃するボランティアの話などから鉢に細工が加えられたのは今年7月以降とみている。表面にはビーズやろうそく立ても埋め込まれている。

 鉢を寄贈したのは木場昭春さん=2016年死去。遺族や残された手記によると、広島旅行で平和記念公園を訪れた際、献花された花が地面に置きっ放しになっているのを見かね、鹿児島に戻って地元の石材屋で鉢を作り寄贈したという。

 木場さんの長男修一さん(60)=三重県鈴鹿市=は、共同通信記者からの情報提供を受け11月、供養塔を訪れた。「父から寄贈の話は一度も聞いたことがなく驚いた。こういう状態になるのは苦しい。寄贈から50年以上が経過し、鉢の役目は終わったのかなとも思うが、元に戻してほしい」と話した。

 定期的に供養塔で追悼している市民たちの間では「誰かが何らかの宗教的な目的で埋めたのではないか」との声もある。広島市の担当者は「誰が何のためにやったのか分からないが、遺族が望むのであれば何ができるか考えたい」と話している。