二つの蔵の酒のブレンドや、ワインクーラーのように瓶を冷やせる箱―。新型コロナウイルスの影響による需要落ち込みに悩む日本酒業界で、東北の蔵元が、日本酒から縁遠い層を引きつけようと新たな取り組みを始めた。
5種類の原酒をブレンドし大吟醸「ヤマカン」(720ミリリットル入り2970円)を造ったのは、勝山酒造(仙台市)と阿部勘酒造(宮城県塩釜市)。勝山の伊沢平蔵社長(61)は「コロナで在庫が増える中で、座して待つより打って出よう」と、会社の垣根を越えた酒造りを企画した。
交流のあった阿部勘を誘ったが、勝山はうまみ、阿部勘はキレが特徴で全く違う。互いが納得するバランスになるまで調整を繰り返した。伊沢社長は「上品な酒質で飲み飽きない」と出来栄えに自信を見せる。緑や茶でなく、若者に手に取ってもらいやすいよう透明の瓶を採用、ラベルはカエルをあしらったポップなデザインにした。
阿部勘の阿部昌弘社長(37)は、コロナ禍ならではの挑戦として「コロナがなければ生まれなかった。面白い酒になったので、ぜひ飲んでほしい」と話す。
酒を冷やせる容器として箱を使える「豊盃 純米大吟醸 黄金の穂」(720ミリリットル入り1万1千円)を発売したのは、三浦酒造(青森県弘前市)。内側をビニールで特殊撥水(はっすい)加工した箱のふたを開けると、底を中心に花が開くように広がり、氷や水を入れ酒を冷やせる容器に変身する。「面白いものを作りたい」という遊び心から生まれた。
コロナ下で明るい話題を届けたいとの思いがあったという同社の三浦文仁専務(45)は「『ばえる(映える)』見た目なので、若者にも広がってほしい」と話した。