3月に始まった「WeLove山陰キャンペーン」で、新型コロナウイルスの感染が比較的抑えられている両県内で旅行を楽しむ県民が増え、コロナ禍以前の客入りに戻った宿泊施設も出てきた。都会地からの集客が見込めない中、観光関係者はキャンペーン延長を歓迎し、さらなる回復に期待する。
3月下旬、山陰の小京都・島根県津和野町では島根、鳥取ナンバーの車が多く行き交った。
津和野温泉宿わた屋(津和野町後田)の三家本康倫営業課長は「3月後半はほぼ満室」と満足顔。閑古鳥が鳴いていた2月とは打って変わる盛況ぶりだ。3月は宿泊客の7~8割がキャンペーンを利用した両県民だった。
三家本課長が目を見張ったのは、直線距離で約250キロ離れた鳥取市からの宿泊客の多さ。コロナ禍以前はほとんどいなかったが、両県民利用の20%を占めた鳥取県民のうち、15%が鳥取市民で「遠出してリフレッシュしたかった」と長旅を楽しむ声を聞いた。
現時点の島根県の集計によると、約2万7千人がキャンペーンを利用して県内施設に宿泊した。内訳は島根県民8割、鳥取県民2割だった。集計中の鳥取県も同様に、にぎわっているという。
出雲神々縁結びの宿紺家(松江市玉湯町玉造)は3月のキャンペーン利用が9割を占め、稼働率が7~8割に回復。皆生菊乃家(米子市皆生温泉4丁目)の柴野憲史社長は「宿泊客の3割以上が鳥取県民で、その多くが地元の米子市の皆さんだった」とし、近場に足を向けさせたキャンペーンの効果を実感する。
とはいえ、4月の予約状況が鈍い施設は多く、鳥取県内でのクラスター(感染者集団)発生でキャンセルが出た宿も。依山楼岩崎(鳥取県三朝町三朝)の中島知彦販売部長は「予約数よりキャンセル数が多い日が目につく」とし、キャンペーン延長による巻き返しを期待。かめや旅館(浜田市金城町追原)を営む横田雪生さん(73)は「延長期間中にリピーターを増やしたい」と意気込む。(曽田元気、藤本ちあき)