「デジタル庁」創設を柱とするデジタル改革関連法案の国会審議が大詰めを迎える。法律が成立すれば個人情報保護や国と地方自治体の情報システムの在り方などが、デジタル化の旗の下で大きな変更を迫られる。国に一元的な権限を与えデータ利用が加速する点に、国民には監視や統制強化へ危惧の声がある。法案に国への歯止めをしっかり盛り込むべきだ。

 関連法案は、理念を定めた基本法案やデジタル庁設置法案、個人情報保護法の改正案など約60本で構成される。

 菅義偉首相の看板政策を実現する重要法案と位置付けられ、衆院は通過。政府、与党は国民の暮らし向上につながるとして参院での早期可決、成立を目指している。

 だが、国会審議が進むにつれて明らかになってきたのが国に対する歯止めの弱さである。

 まず個人情報の保護だ。現在は民間と行政機関、独立行政法人で三つに分かれる情報保護の法律を1本に統合。それに伴い個人情報保護委員会が民間だけでなく行政機関などの監視・監督も担う形に改め、政府は情報保護がこれまで以上に担保されると強調する。

 しかし、これまでと同じく行政機関に「相当な理由」のあるときは、本人の同意なしで個人情報の目的外利用や提供ができる点は変わらない。それでいながら民間に対しては保護委員会に認めている是正のための「命令」権限が行政機関に対してはなく、改正案では「勧告」にとどまる。

 関連法成立とデジタル庁の創設、そしてマイナンバーカードの多機能化などが進めば、これまで以上に個人データの利用や国への集中が見込まれる。プライバシー保護に対する国民の不安は当然であり、改正案は十分とは言えまい。行政機関に対する保護委員会の権限強化などを検討すべきだ。

 個人情報保護については自治体の枠組みも変わろうとしている。それぞれが条例で定める自治体の個人情報保護規定を「いったんリセット」(平井卓也デジタル改革担当相)し、全国的な共通ルールに改めるからだ。これにより災害時の避難者情報などが自治体間で共有しやすくなる、と政府はメリットを挙げる。

 だが、個人情報保護では自治体が国に先行してきた歴史があり、共通化で保護規制が弱まる恐れがある。全国知事会などは「地方の自主性を尊重すべきだ」と要望しており、制度上の十分な配慮がなされるべきだ。

 デジタル庁ならびに国のデジタル政策の膨張に対する歯止めも必要だ。新庁はデジタル政策の立案を担い、国と自治体の情報システムを統括・標準化。予算はデジタル庁へ一括計上した上で各省庁へ配分する方針で、2021年度予算には3千億円が盛り込まれた。

 今後、マイナンバーカードの多機能化や自治体のシステム共通化が進むにつれ関連経費の急増が予想されるが、「聖域化」は認められない。

 IT基本法制定から20年余り。日本のデジタル政策は巨費を投じた割には成果に乏しい。マイナンバーではこの9年間で8800億円を費やしながらカードの普及、利用ともに進まず菅首相でさえ「(コストパフォーマンスが)悪過ぎる」と認める現状だ。その反省に立って膨張への具体的な歯止めを国会で論じてもらいたい。