撮影スタッフの前で機織りを実演する永田佳子会長(手前)=安来市広瀬町広瀬、広瀬絣工房
撮影スタッフの前で機織りを実演する永田佳子会長(手前)=安来市広瀬町広瀬、広瀬絣工房

 【安来】約200年にわたり安来市広瀬町に伝わる伝統工芸・広瀬絣(がすり)の制作工程の記録映像化が進む。島根県指定無形文化財でありながら制作技術をまとめた動画がなく、広瀬絣技術保存会(永田佳子会長)が乗り出した。30分程度の映像に編集し、3月中に保存会ホームページ(HP)で公開する計画だ。

 広瀬絣は江戸後期の1824年、医師の妻だった長岡貞子が米子で染色技法を習得し、広瀬の女性たちに広めたのが始まりとされる。絵模様に幾何学文様を組み合わせた大きな柄が特徴。藍の濃淡を交えて文様が正確に浮き出るよう丹念に織り上げる。1962年に県の無形文化財に指定された。

 県無形文化財技能保持者の永田会長(70)=安来市広瀬町広瀬=は、所長を務める広瀬絣伝習所(広瀬町町帳)で技術保存と後継者育成に取り組む中、伝統の技を分かりやすく後世に伝える狙いで記録映像化を思い立った。

 伝統工芸などのコンテンツ制作を手掛ける東京の業者に依頼し、昨年10月から4回に分けて撮影。型紙作り、糸の長さや張力の調整、糸に文様を写す型付け、機織りといった工程を永田会長が実演し、説明する姿をカメラに収めた。

 今後は字幕を付けるなどの編集作業を進めてHP用動画を作るほか、教材用の動画制作も検討中という。永田会長は「動画が技術保存に加え、広瀬絣を学ぶ人の教科書代わりになればうれしい。日本の手仕事の魅力発信にも活用したい」と話した。 (渡部豪)