序章 (十四)

 矢上は駆け出したい衝動を堪(こら)え、慎重に門柱に手を置いたまま九十度左に向き直った。

 門扉はとうの昔に失われており、闇の奥に引き違い戸の磨(す)り硝(ガラ)子...