アフリカ南部・レソト王国で、カメラを用いた教育プログラムを実践した渡邊莉瑚さん(中央奧)=米子市出身
アフリカ南部・レソト王国で、カメラを用いた教育プログラムを実践した渡邊莉瑚さん(中央奧)=米子市出身

 米子市出身の千葉大生、渡邊莉瑚(りこ)さん(23)は2021年、アフリカ南部のレソト王国で教育格差解消のためのプログラムに携わった。帰国後の3月、地元の米子市でプログラムの一環として現地の子どもたちが撮影した写真を並べた写真展を開いた。異国での教育活動に参加した経緯や現地で感じたこと、今後の目標を聞いた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

▷カメラで残した「何気ない日常」
 渡邊さんは米子市旗ヶ崎出身で、現在は千葉大学国際言語文化学科の4年生。2019年の夏休みに、大学の教授の紹介でアフリカ南部にあるレソト王国を訪れた。帰国後、レソトで知り合った写真家、ジャスティス・カレべさんから現地の子どもたちを対象にした教育プログラムに誘われ、参加を決意した。2021年4月に再びレソト王国を訪れ、10カ月滞在した。

米子市出身で、千葉大学国際言語文化学科4年生の渡邊莉瑚さん(渡邊さん提供)

 教授に紹介されるまでは「レソト王国という国を知らなかった」と渡邊さん。「出発に向け、インターネットでレソトについて調べたが、記事が2、3本ヒットする程度だった」というが、過去にタンザニアやアフリカでボランティアに参加した経験があり、大きな不安はなかったという。初めてレソトを訪れた時の印象は「自然が豊かで、民族衣装など伝統が残っているのを感じ、すてきだなと思った」と話した。

 渡邊さんが滞在したのは首都・マセルから車で1時間半、さらに山道を歩いて2時間の場所にあるハ・セカンツィ村。村では子どもたちが家事の手伝いや家畜の世話をしながら、片道2時間ほどかけて学校に通っていた。渡邊さんは村に住む約20人の子どもたちに英語を教えたり、村に教育施設を作るためのクラウドファンディングを進めたりと、子どもたちが教育を受けやすい環境を作るための活動に取り組んだ。

村の子どもたちと山に登った時の写真。奧が渡邊さん。(渡邊さん提供)

 活動の一環として渡邊さんは、子どもたちにより視野を広げてもらおうと、カメラを渡して写真を撮ってもらうのはどうかと思いついた。インドのスラム街に住む子どもたちが写真撮影を通して自由を手に入れるドキュメンタリー映画「未来を映した子どもたち」から着想を得たという。子どもならではの大胆な発想を生かして表現力を育んでほしいという思いや、海外の人ではなく、現地の子どもたちだからこそ切り取ることができる風景を写真に残したいとの気持ちもあった。

渡邊さんが渡したカメラで写真を撮る子どもたち(ジャスティスさん撮影、渡邊さん提供)
子どもが村の様子を撮影した1枚。洗濯物が干されていたり、収穫されたトウモロコシが家の前に並んでいたりと、日常の風景をうまく切り取っている。(渡邊さん提供)

 生まれて初めてカメラを手にした子どもたちに、渡邊さんは電源の入れ方や持ち方を説明。子どもたちは風景や互いの顔を撮影して盛り上がった。渡邊さんは「初めて自分が写った写真を見て喜んでいる様子や、撮った写真を親に見せるために走って家に帰る姿を見て、感慨深かった。思い出を残せたという面でも、やって良かったと思った」と、活動を振り返る。

カメラを持ち、楽しそうに笑う子ども(ジャスティスさん撮影、渡邊さん提供)

 持参したカメラ7台はそのまま村に置いてきたといい、渡邊さんは「今後も第2弾、第3弾と(活動を)続けていきたい。もっとたくさんのカメラを用意して、自分が村にいなくてもカメラを通した教育活動が継続されるよう、仕組みを作りたい」と、今後の目標を話した。

▷レソトと日本つなげたい
 渡邊さんは2022年1月末に帰国し、3月、子どもたちが撮影した写真を並べた展示「レソト王国から日本へ」を米子市美術館(米子市中町)で開いた。家族や知人、友人など地元から多くの人が、クラウドファンディングに協力してくれたといい、プログラムの成果を見せたいとの思いから、地元・米子で写真展を開いたという。

写真展会場で作品に見入るパレサ駐日大使と伊木隆司米子市長。右が渡邊さん=米子市中町、米子市美術館

 渡邊さんは「協力してくれた人たちが展示会に来てくれて、直接お礼を言うことができて良かった」と話した。来場者の「写真展を通して初めてレソトのことを知った」との声や、写真展を訪れたレソト王国のパレサ・モセツェ駐日大使の「観光客や外国の人が撮った写真ではなく、現地の子どもたちが撮影したことでレソトの日常の雰囲気がより強く出ていてうれしい」というコメントも励みになった。

子どもが撮影した写真。ハ・セカンツィ村では馬が主要な移動手段という。(渡邊さん提供)

 帰国後は日常生活のふとした瞬間、レソトの子どもたちに思いをはせる。「例えば、子どもたちを電車に乗せたら喜ぶだろうな、日本の食事を前にしたら驚くだろうな、などと想像している。いつか、レソトの子どもたちを日本に招待したい」

 渡邊さんの取り組みはレソト王国と米子市とのつながりをつくった。レソトの子どもたちが日本を訪れたり、日本の人々がレソトを訪れたりと、交流が深まる日も近いかもしれない。