第104回全国高校野球選手権大会で島根代表として出場する浜田高校を、特別な思いで見守る男性がいる。浜田市三隅町井野のバス運転手、岡田智さん(71)は、浜田が8強入りした1998年、江の川(現・石見智翠館)が4強入りした2003年などで、ナインを甲子園へ運んだ。ハンドルを握ると島根勢が躍進し、勝利の女神ならぬ「勝利を呼ぶ運転手」と呼ばれた。現在は送迎から離れ路線バスを運転しているが、当時の選手たちにもらった寄せ書きを大事にしており、浜田の勝利を祈っている。 (宮廻裕樹)
岡田さんはトラック運転手やタクシー運転手を経て40歳過ぎに石見交通(益田市幸町)に就職し、貸し切りバスを担当。石見智翠館が出場した13年夏まで、県西部の高校球児を甲子園へ送り届けた。
現地でも選手に付きっきり。慣れない道で迷わないよう、事前に地元の警察署に立ち寄り、宿舎から練習場まで渋滞しない道順を教えてもらってから走った。「何より大事な選手を乗せるから、負担をかけたくなかった。30分以上前に到着できるよう心がけた」と振り返る。
春夏合わせて過去5回送迎した浜田は「どの世代も礼儀が非常に良かった」。降車時にお礼のあいさつを欠かさず、車内もきれいに掃除してくれたという。
送迎の度に選手にお願いして書いてもらった寄せ書きが宝物。浜田の1998年の寄せ書きにはプロ野球ソフトバンクホークスの和田毅投手が「信頼」と記し、仲間への思いが伝わる。
浜田は部員らに新型コロナウイルスの感染が確認され、13日に予定される初戦に向けて体調を万全に整えている最中だ。
2004年に主将として出場した家田康大監督は当時の寄せ書きに「最高のプレーを」との言葉を残した。岡田さんは「体調をしっかり治して、ベストな状態で戦えるよう頑張ってほしい」と願う。