1955年のTop30は「デイビー・クロケットの唄」が3組入っていることの他にも興味深いことがある。55年上映の映画Unchainedの主題歌“Unchained Melody”(邦題「アンチェインド・メロディ」)もこの年にはやったが、2組の異なるアーティストでチャートインしている。年間5位レス・バクスター楽団、21位黒人男性シンガーのアル・ヒブラーである。ちなみに映画では当時有名な男性オペラ歌手が歌っていたが、ヒットチャートに顔を出すことはなく、カバーした2組がチャートインとなった。
一つの曲が複数のアーティストによってTop30に入ったのとは逆に、1人が複数の曲でチャートインというケースもある。前回「デイビー・クロケットの唄」で24位だったテネシー・アーニー・フォードは、13位に“Sixteen Tons”でも顔を出しているし、女性歌手ジョージア・ギブスは、10位“Dance with Me Henry(Wallflower)”と16位“Tweedle Dee”の2曲。
そして、この時代の大きな特徴がもう一つ。Top30の主な構成を見ると、大まかに言って男性シンガーが約15曲でおよそ50%の構成、女性シンガーは約5曲で16%、そして残り3分の1の約10曲は、なんと“Unchained Melody”をはじめとする映画音楽やインストなのである。
当時、映画という娯楽がどれほど人々の間に浸透し、レコード売り上げやラジオのリクエスト数、さらにはジュークボックスの再生回数に多大なる影響を及ぼしていたのかが分かろうというもの。この年のTop30で映画音楽&インストの最高位は、全体4位となったフランス生まれの”Autumn Leaves”(邦題「枯葉」)だった。この曲が作られたのは1945年。元々はバレエ団のための曲だったようだが、後にフランス映画「夜の門」の主題歌に採用され、欧州や米国に一気に広まったのだとか。
これをカバーして演奏したのがピアニストのロジャー・ウイリアムス。ストリングスと調和を取りつつも、まるでピアノ・コンサートを間近で聴いているかのように、強弱を伴った音符が次々と繰り出される。新人としてレコーディングに臨んだ彼は、ピアニストとして初めてピークで全米1位に輝いたのだった。このような楽曲が年間Top30の上位にランクされたこと自体、まさにオールディーズな出来事だったのだと思う。
(オールディーズK)
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