神奈川県の温泉地、湯河原町の一角で10頭ほどのヤギが放牧されていた。眼下に住宅地が広がる高台で、気持ちよさそうにヤギが草を食べる「牧場」を、10月に取材で訪れた。
管理の難しくなった土地で、人に代わって、放し飼いにしたヤギに除草を担ってもらい、省力化などの有効性を探る事業に取り組むのは東京都のベンチャー企業「むじょう」。島根県立隠岐島前高を卒業した前田陽汰さん(25)が慶応大在学中に立ち上げた。
葬祭関連からスタートした事業は今、人口減少時代でいかに充実した形で地域を縮小させていくかをテーマに、多くの研究や実践を重ねている。ヤギによる除草もその一つだ。
この事業は将来、各地で被害が急増するクマ対策の一助になるかもしれない。耕作放棄地の増加や里山の荒廃を食い止めたいとの思いがあるからだ。「クマの問題は、田畑に手を入れなくなって雑草が生い茂り、山と人のすみかが地続きになっていることで起こる」と前田さん。
石破茂前首相も、26日の平井伸治鳥取県知事らとの意見交換会で似たような主張をしていた。「里山が荒廃したので、ストレートにクマが人家に下りてくる。面白おかしくコメの増産を言ったわけではなくて、里山を復活させ、本来の姿を取り戻す時に水田営農は非常に重要だ」-。深刻度を増すクマ被害問題を契機に、国は中長期的な耕作放棄地対策に本腰を入れるべきだ。(吏)













