タコの一種だが殻を持つ「アオイガイ」の全ての遺伝情報(ゲノム)を網羅的に調べる全ゲノム解析に、島根大隠岐臨海実験所(島根県隠岐の島町加茂)の吉田真明准教授(40)=進化生物学=らの研究チームが成功した。希少で謎の多いタコの進化過程や生態解明に役立つという。
アオイガイは捕獲数が少なく吉田准教授は、近海で定置網を営む吉田水産(隠岐の島町北方)の吉田稔社長(60)の協力で、網に入った際に生け捕りにする態勢を整えている。
2019年に吉田水産の定置網で捕獲された個体の一部を国立遺伝学研究所(静岡県)で解析。結果、ゲノムを担うDNAに含まれる塩基対は約10億あり、タコの仲間では最少と分かった。
タコの祖先は殻を持っていたとみられ、アオイガイも他のタコと同様、一度は殻がなくなったものの、進化の過程で腕から殻を作るようになったと考えられてきた。ゲノム解析では、この仮説を裏付ける遺伝子の変化が見つかった。
古代に絶滅したアンモナイトと同じ遺伝子も確認。全体的には、体の一部がマント状になって水中を漂うムラサキダコに近い種類だと分かった。アオイガイは希少だが世界各地に分布。全ゲノム解析は外国の研究者にも役立つ情報となり、研究が進めば将来的にバイオテクノロジーの発展にも寄与するという。
吉田准教授は「遺伝子が発現する場所や変化を詳しく調べたい」と話す。ほかにも隠岐諸島でないと採取が難しい海の生物が多いと強調し、吉田社長と協力して今後も生態未解明の生物の研究に尽力するとしている。
(鎌田剛)