iPadを使い浪曲の練習に励む安部重利会長ー松江市内
iPadを使い浪曲の練習に励む安部重利会長ー松江市内

 タブレット端末「iPad(アイパッド)」で三味線の音を流して浪曲を楽しむ「iPad浪曲愛好会松江」が、三味線の弾き手がいなくても一人でできる手軽さで、県外にも愛好の輪を広げている。安部重利会長(84)=松江市古志原4丁目=が自らシステムを改良し、生きがいとして情熱を注ぐ浪曲の魅力を伝えている。 (吉田真人)

 

 浪曲は三味線を伴奏に、独特の節とせりふで物語を演じる。安部さんは小学生の頃に浪曲を知り、社会人になると広島市内の家電量販店で見つけた浪曲師・初代広沢虎造の「石松三十石船道中」のカセットテープを購入。その後もCDやラジオなどを聞き込んだ。

 転機は2012年。ラジオで虎造節保存会の存在を知り、入会して自らうなるようになった。全国大会に出場した際、保存会のメンバーが開発したiPad浪曲の存在を知った。典型的な三味線のフレーズ16種類を端末に取り入れ、画面のキーをタッチして音が流れる仕組みだ。

 三味線奏者を確保するのは難しい。「これがあれば一人でもできる」とすぐに取り入れた。電子機器の扱いはもともと得意で、難なく操作方法を習得。知人らを誘い、13年に愛好会を設立した。安部さんがうなり方やアイパッドの操作方法などを教え、ほぼ毎年口演会を開いている。

 18年3月、茨城県つくば市にいる娘のつてで、同市内で口演会を開く機会があった。地域住民が訪れ、会場は想像以上に盛り上がった。「それならここに支部をつくればいいんじゃないか」と提案し、19年に支部が誕生した。

 21年にはホームページを見て興味を持った札幌市の男性から連絡があり、札幌支部の発足につながった。

 うなる気持ちよさや、義理人情などの日本人の心が感じられる浪曲の魅力をもっと伝えようと、安部さんはシステム改良で、操作できるフレーズを34種類に増やし、演目の幅も広げた。

 現在、支部も含む46人で活動。妻の浩子さん(81)も所属し、夫婦で浪曲を楽しむ。今後は「うなることができる若い後継者が出てきてほしい」と期待している。

 問い合わせは安部さん、電話080(1641)6753。