渡辺京二さんに一度だけ会ったことがある。大学院博士課程に属していた1991年6月のことだ。熊本市郊外の自宅まで、JR熊本駅前から市電とバスを乗り継いで行った。

 当時、渡辺さんは還暦を過ぎたばかりで、近代日本思想史に関する著作を既に次々と世...