鳥取県西部の日野川で、初夏の到来を告げる天然アユの遡上(そじょう)がピークを迎えている。例年より1週間以上も早く、遡上数は近年で最も多い。海で一冬を越して育った体長15センチ前後の若アユが銀鱗(ぎんりん)の魚体を躍らせ、上流を目指す。
美保湾に注ぐ河口から約2キロ上流にある米子市吉岡の車尾堰(くずもぜき)では、水温上昇とともに若アユが群れをなして集まり、高さ1メートル超の堰に向かって次々とジャンプ。急流にあらがいながら魚体をくねらせ、懸命に乗り越える。
アユの放流事業を手がける日野川水系漁協によると、今季の遡上は3月7日に初確認。その後も順調に増え、4月半ばに車尾堰の魚道で調べた数は10分間に2千匹を突破した。この勢いが続けば、今季の天然アユは200万匹に達するという。
アユの生態に詳しい漁協種苗生産場長の森下尊士さん(48)は「漁協が取り組んでいる河川の産卵場整備など活動が実を結んできた」と話した。(山根行雄)