■短歌 寺井 淳選

「しわいねぇ、がんばったねぇ」と声かける少し眼を開け頷く友よ 美 郷 尾原 裕子

  【評】作者の立場で詠まれた歌を、読者は声をかけられたように思って読む。「がんばったねぇ」ということばに、われわれは一人ひとり、感謝を込めてうなずく。

盆栽の古本にメモ走り書き四十年ぶり父の声きく         出 雲 増田のぼる

  【評】子どもにとり自筆のメモは父親の肉声に等しい。盆栽の古本という具体的な媒体によって、手書きの文字はVTRやスマホ画面よりも生々しいはず。

若い日の思...