外部専門家による「再発防止特別チーム」が、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長(2019年死去)による性加害調査の結果を公表したことを受け、事務所は7日、記者会見をした。さかのぼること24年前、文藝春秋の週刊誌「週刊文春」はメディアとして初めて前社長の性加害について報道。当時、取材チームのリーダーを勤めていた、元編集長の木俣正剛さん(68)=大阪キリスト教短期大学客員教授=がこのほど松江市で講演し、性加害問題について語った。記者会見の受け止めを含めて、内容を紹介する。
(Sデジ編集部・鹿島波子)

 

▽「週刊文春」で性加害問題を連載した理由


 1999年、週刊文春は喜多川氏の性加害問題を報じた。当時、元所属タレントによる暴露本も出ていたが、性加害問題を取り上げたメディアは他になかった。なぜ取り上げることになったのか。

 「20数年前、当時の週刊文春はサラリーマンの40~50代相手の雑誌だったので、芸能記事はほとんどなかった。当時は実売60万部、夏休みや冬休みの合併号は120万部くらい刷るので、大きなネタがほしかった。その頃、元所属タレントの暴露本が出ていて、タレントがそういう目にあっているのはゆゆしき事態だなと思った」
 
 「1990年代はようやく『セクハラ』が認識された時代。ただ、日本で問題になっているのは、まだ個人によるものだけで、組織のセクハラは、世界各国が常識になりつつあるときに、日本では認識が全然進んでなかった。それならば、問題提起も含めて大きな連載をしようと思った」

24年前の「週刊文春」で、ジャニーズ事務所の性加害問題に関する連載を手掛けた木俣正剛さん=8月、松江市内

 連載では、喜多川氏によるセクハラを巡り、14回にわたって掲載した。登場する人が2次被害を受けないよう、誰が被害を受けたか分からないように配慮して書いたという。証言の検証も徹底した。

 「何人も集めて合宿所やホテルに呼びつけ、雑魚寝しているところに一緒に入ってくるという話を聞き、同じような場所を用意し、寝た位置を聞いて、同じ格好をして検証したりもした」

 

▽メディアの報道に思うこと


 ジャニーズ事務所側は、名誉毀損(きそん)に当たるとして損害賠償を求めて出版元の文藝春秋を提訴。訴訟では、2004年に記事の主要部分を真実と認める判決が最高裁で確定した。しかし、他のメディアは裁判の内容や性加害問題を詳しく報じなかった。

 「週刊文春の主要な部分もほとんどが認められたという、極めて重要な判決だったが、ほとんどの新聞社は無視した。ニューヨークタイムズの日本担当記者が熱心に取材していた。世界的には注目されていたのに」

 理由について、木俣さんは次のように推察した。

 「無視した理由は二つ。...