第六章 来去来(十一)

 寅蔵は炭屋と会うたび、伸びた素(そう)麺(めん)を思い出す。愛想は悪くないのだが物言いがぼそぼそとして会話が続かず、誰かの背後で曖(あい)昧(まい...