信号がない場所での横断について、全国の警察が全世代を対象に手を上げて渡るよう交通安全教室などで指導し、歩行者の事故防止を図ることが17日、47都道府県警への取材で分かった。警察庁が4月、道交法に基づき交通マナーをまとめた「交通の方法に関する教則」を改正し、歩行者の心得として「手上げ横断」を43年ぶりに復活させたことから、全国一律での動きとなった。
政府も3月の交通安全基本計画で歩行者の安全確保を「重視すべき視点」としている。死亡事故の中では歩行中が最多で、6月には千葉県八街市で下校中の小学生5人が大型トラックにはねられ死傷した。全国の警察は、手を上げることや顔を向けることによって横断の意思を運転手側に伝えるなど、歩行者が自らの安全を守る行動を促したい考えだ。
警察庁の担当者は「手を上げて合図し、さらに車の動きに注意を払うことが大切」としている。
同庁によると、1972年に教則ができた際は、横断の仕方について「手を上げて合図をし、車が止まってから渡る」などと定められた。だが、78年の改正で手上げ横断は削除され「車が近づいているときは、通り過ぎるまで待つ」に変更。今年4月の改正では「手を上げるなどして運転者に横断の意思を明確に伝える」と盛り込んだ。
共同通信は6~7月、47都道府県警に取材し、回答を得た。78年の改正教則などに基づき、これまで手上げの指導をしていなかったとした青森と、「記録がなく明言できない」「分からない」とした岩手、三重を含め、47都道府県警が全世代に指導をするとした。
死者は59年に初めて1万人を突破。70年には最多の1万6765人が亡くなり「交通戦争」と呼ばれた。90年代半ば以降は交通環境の整備や道交法改正などで減少傾向を実現。2020年は過去最少の2839人で、70年の6分の1まで少なくなった。
だが日本は欧米に比べ死者に占める歩行者の割合が高い。20年も状態別では最多で、全体の35・3%に当たる1002人が歩行中だった。車による「横断歩行者妨害」の摘発も近年、年間20万件を超えており、さらに死者の減少を進めるには、歩行者の安全確保が最優先課題となっている。












