スポーツで使われる「球際の強さ」。ぎりぎりのところでボールを捕ったり、競り合いに勝ったりできる力だ。野球でいえば、抜けそうな打球を飛び付いてつかむ野手の好プレーが浮かぶ。
「球際」はプロ野球の巨人を9年連続日本一に導いた名将・川上哲治さんによる造語だそうだ。相撲の「土俵際」から採り、「球際に強くなれ」と諦めないプレー、粘り強いプレーを求めた。実際に当時の左翼手・高田繁選手は卓越した守備を見せて「塀際の魔術師」と呼ばれた。
サッカーで印象深いのは「三笘の1ミリ」。2022年ワールドカップ(W杯)のスペイン戦で、ラインから外へ出そうなボールを必死に折り返した三笘薫選手のプレーが勝利を呼び込んだ。その瞬間の写真も話題になった。撮影したカメラマンは「シャッター際」が強いと言うべきだろうか。大切な場面を撮り逃したことがある身としてはうらやましい限りだ。
「○○際」は「土壇場」に通じる。ここ一番で力を発揮できるかどうか。勝負の世界に生きる人は土壇場の繰り返し。勝つこともあれば、負けることもある。その積み重ねが実力につながる。
プロ野球界をけん引した野村克也さんは「土壇場を乗り切るのに必要なのは勇猛ではなく、冷静な計算の上に立った捨て身の精神」という言葉を残した。ID野球を提唱した名将らしい。いざという時に発揮されるのは普段の蓄積なのだろう。(彦)













