マスクの密着性を高める方法
マスクの密着性を高める方法
「混雑していない屋外ならマスクはいらない」と話す西村秀一さん
「混雑していない屋外ならマスクはいらない」と話す西村秀一さん
マスクの密着性を高める方法
「混雑していない屋外ならマスクはいらない」と話す西村秀一さん

 新型コロナウイルス流行の当初、未知のウイルスに対する最大限の対策が取られた。あれから1年余り。感染の特徴が分かってきたのに、それに応じた対策の見直しが進んでいないと、国立病院機構仙台医療センターの西村秀一ウイルスセンター長は警鐘を鳴らす。

 西村さんはインフルエンザなど呼吸器系ウイルス感染症を専門とする研究者だ。まず最も注意すべきなのはエアロゾルによる感染だと指摘する。

 エアロゾルは空気中に浮遊する固体や液体の粒子のこと。新型コロナウイルスは呼吸器の粘膜で増殖し、粘膜を覆う液体中に出てくる。その液体が、せきやくしゃみ、発声など気道を通る空気の流れに引っ張られてエアロゾルとなり、口や鼻から飛び出す。それを吸い込むのが主な感染の仕方だとみられている。

 医学では従来、大きさが5マイクロメートル(1マイクロメートルは1ミリの千分の1)以下の粒子による感染を「飛沫(ひまつ)核感染」、それ以上の粒子による感染を「飛沫感染」としてきた。だが現在は大きさによらず、「エアロゾル感染」と総称されることが多い。

▽納体袋は不要

 西村さんによると、飛沫に触った手から新型コロナに感染する接触感染のリスクは極めて低いことが分かってきた。

 「それでもアルコール消毒や机の上の仕切り板など過剰な対策が続いている。公園の遊具を使用禁止にする必要もない」

 新型コロナ感染症で亡くなった人や感染した疑いのある人の遺体について厚生労働省は、液体が漏れない「納体袋」に入れるよう勧めている。

 これに対し西村さんは「新型コロナの場合、感染を引き起こす活性のあるウイルスが遺体から出てくることはない。普通のやり方で全く問題ない」と話す。

▽3密回避とマスク

 エアロゾルの全てに活性のあるウイルスがいるわけではなく、ごく一部に限られる。気を付けなければいけないのはウイルスを含むエアロゾルを吸い込みやすくなる3密(密閉、密集、密接)の状況だ。「三つの要素のどの一つも単独で感染のリスクを高める。3密回避とマスク着用が感染を防ぐ最も有効な手段です」

 西村さんの実験結果では日常的に使うものとしては不織布マスクで十分。ただし、微粒子ろ過効率(PFE)と細菌ろ過効率(BFE)が95%以上のものを選ぶべきで、最も重要なのは着け方を工夫したり上からウレタンマスクを着けたりして装着時の密着性を高めることだという。

 ウイルスを含むエアロゾルは感染して症状のない人からも出る。もっとも、静かに話すだけなら出るエアロゾルは少なく、うがい薬やお茶で口をゆすぐことでウイルスは減る。焼き肉店など換気の行き届いた場所は感染のリスクが低い。

 「こうした正しい情報が伝わらず社会が病的になっている。エアロゾル感染を防ぐ工夫をしながら、人間らしい自由な生活を取り戻してほしい」

     ◇   

 にしむら・ひでかず 1955年山形県生まれ。山形大医学部卒。米疾病対策センター(CDC)などを経て2000年から現職。近著に「新型コロナ『正しく恐れる』2」(藤原書店)「もうだまされない新型コロナの大誤解」(幻冬舎)。

 

若い世代も半数に後遺症

 年齢が若く中等症や軽症で済んだ場合でも、新型コロナウイルス感染から半年後も後遺症に悩まされる人が半数以上を占めるとする研究結果を、ノルウェー・ベルゲン大のチームがまとめた。

 ノルウェーのコロナ感染者312人を半年にわたって追跡。後遺症の有無について調べると、61%が嗅覚・味覚異常や疲労感、息切れ、集中力・記憶力の低下といった症状を訴えていた。

 入院せず自宅療養だった16~30歳の人も52%に何らかの後遺症がみられた。変異株の広がりなどで若い世代の感染が増えておりチームはワクチン接種強化の必要性を訴えている。研究は米医学誌ネイチャーメディシンに発表した。