女子ストリート決勝 演技する西矢椛=有明アーバンスポーツパーク
女子ストリート決勝 演技する西矢椛=有明アーバンスポーツパーク

 女子ストリートで世界選手権2位の13歳、西矢椛が15.26点で金メダルを獲得、世界選手権6位の中山楓奈(以上ムラサキスポーツ)も14.49点で銅メダルを手にした。

 レアウ(ブラジル)が14.64点で2位。世界選手権覇者で優勝候補だった西村碧莉(木下グループ)は6.92点で8位。

 

ヒロイン

 一発技を争うベストトリックの最終5回目。試技を残す西矢と中山に金メダルの行方は絞られた。しびれる状況で西矢は先に技を決め、両手を頭上に掲げた。「乗って(成功して)ほしいけど、乗らないでほしい」と複雑な心境で見守ったライバル中山が転倒。笑顔に涙の滴がつたい「うれし過ぎて涙がこみ上げてきた」。初々しい13歳の五輪女王が誕生した。

 ベストトリックの最初の2回を失敗し「焦っていた。途中まではもう勝てないと思っていた」と言う。だが年齢に似つかわしくない落ち着きで3回目から巻き返した。高さのある手すりを使った技の多彩さで勝機を引き寄せた。

 3回目は手すりに跳び乗り、板の先端を押し下げて金具部分で滑り降りる「フィーブル・グラインド」で4・15点。4回目は板を横に半回転させてから板の裏側で手すりを滑る「ビッグスピン・フロントサイド・ボードスライド」を決め、4・66点で首位に立った。最後は腰をひねるような動きで、板との一体感が求められる「リップスライド」を決め、得点をさらに伸ばした。

 板を回す細かい技も大胆な動きもこなす。土台は3歳から家族とスノーボードに親しみ、培った体幹の強さにある。肩の力が抜けた滑りには無駄がない。日本チームの早川コーチも「板に乗る感覚がずばぬけ、基礎がしっかりしている。バランスが崩れても修正できる。スケーターが憧れる滑り」と称賛を惜しまない。

 日本史上最年少でのメダル獲得。転倒して出血してもなお、笑みを絶やさず滑る姿は親しみやすいスター性を感じさせる。「世界で知らない人がいないくらい有名になりたい」。五輪史に新たな一ページを加え、壮大な夢への第一歩を踏み出した。