新型コロナウイルスワクチンの接種歴を公的に証明する「ワクチンパスポート」の申請受け付けが26日、全国の市区町村で始まった。使用可能な国の入国審査で提示すれば、隔離やPCR検査の免除といった優遇措置が受けられる。ビジネスの往来を活発化させたい経済界が導入を求めていた。
政府によると、当面は海外渡航用に限定する。使用できるのは21日現在でイタリア、オーストリア、トルコ、ブルガリア、ポーランドの5カ国。このほか、韓国では隔離の免除に必要な書類の一つとして認められた。エストニアはワクチン接種の有無にかかわらず隔離を実施していない。政府は対象国の拡大に向けた交渉を加速させる。
交付を希望する人は申請書やパスポート(旅券)、ワクチンの接種券などを市区町村の窓口に持参するか郵送で提出する。当面は紙での申請、交付に限るが、将来的には電子申請や交付後にスマートフォンに表示できるようにすることも検討している。発行手数料は国が負担する。
加藤勝信官房長官は記者会見で、使用対象国について「逐次公表していく」と述べ、今後拡大させる方針を強調した。ただ、経済界の期待が大きい米中両国は制度上の障壁から見通しは立っていない。
経団連は、国内でもイベントの入場制限緩和や飲食店の割引に活用するよう政府に提言しているが、自治体への過重な負担になったり、接種していない人への不当な差別につながったりするとの懸念が出ている。
国内の一部の宿泊施設や飲食店は、2回接種した「接種済証」の原本などを提示すれば代金を割り引くキャンペーンを始めている。
両県の市町村 少ない申請者
山陰両県の市町村も26日、「ワクチンパスポート」の交付申請の受け付けを始めたものの、現時点で対象国や使途が限られるため、窓口に訪れる人は少なかった。
各市町村はホームページで申請書を入手できるように設定。申請方法は郵送のみや窓口での受け付けとの併用など市町村ごとに異なり、交付も即日発行や郵送と対応が分かれる。
窓口を開設した市町村のうち、松江、米子両市は各1人、出雲市2人、鳥取市には10人が申請に訪れた。
各担当者は、海外渡航時に使うことや、入国審査で優遇措置が受けられる対象国が5カ国のみとなっているため、低調だったと分析。出雲市新型コロナワクチン接種実施本部の福田建二主任は「相談の電話はある。対象国が増えれば、件数が増えるかもしれない」と話した。 (中村成美)












