島根県の獣医師として長年勤務してきた坂本洋一さん(50)が、出雲市塩津町内で漁師の道を歩み始めている。夢中になれることを仕事にしたいという思いで、昨年夏に漁船を購入。地域の支えも受けながら、漁を営んでいる。
坂本さんは神奈川県内の大学の獣医学部を卒業後、大山乳業農業協同組合(鳥取県琴浦町保)を経て28歳の時から島根県の獣医師として働き始めた。
県では、家畜防疫作業に従事。県の基幹種雄牛として期待される「暁(あき)之(の)藤(ふじ)」の誕生にも携わった。しかし、現場以外での業務が増える中で徐々に働き方に違和感を抱くようになった。
そんな時に思い浮かんだのは、上司に誘われて30代後半から始めた釣り。「夢中になれることを仕事にしよう」との思いが高まり、47歳で県職員を退職。漁師を志した。
しかし、道は順調ではなかった。県の研修制度を利用して働き始めた定置網漁で腰を痛め、一度は船に乗れなくなった。諦めきれず、塩津町内ではえ縄漁をする60代夫婦の船に1年間乗せてもらい、基礎を学んだ。
2024年7月末、漁船「一洋丸」(2・2トン)を購入し、8月から漁を始めた。塩津漁港を拠点に、師匠直伝のはえ縄漁に従事する。
漁に使う仕掛けの準備にさえ3時間かかるなど、当初は苦労もあったが、「海も気候も、釣れる魚も毎日違って刺激的。大変だけど面白い」と語る。今では、塩津町内の空き家を借り、松江市内の住宅と2拠点で生活する。
当面の目標は、師匠のように無駄なく作業ができるようになることだ。坂本さんは「漁を一生懸命続けることで、師匠や地域に恩返ししたい」と話している。(片山皓平)













