コロナ禍における孤独・孤立の現状
コロナ禍における孤独・孤立の現状
オンラインで受講する東京都内の私立大2年の新川美桜さん(仮名)=7月、神奈川県内(画像の一部を加工しています)
オンラインで受講する東京都内の私立大2年の新川美桜さん(仮名)=7月、神奈川県内(画像の一部を加工しています)
コロナ禍における孤独・孤立の現状 オンラインで受講する東京都内の私立大2年の新川美桜さん(仮名)=7月、神奈川県内(画像の一部を加工しています)

 新型コロナウイルス禍は、人と人との距離を広げた。心身の不調を訴える人が相次ぎ、自殺者は増加。若い世代も孤独や孤立が深まり、対面授業がなくなった学生は人間関係の構築に苦しむ。政府は重い腰を上げ、対応に乗り出した。

 

 大学に入って1年間全てオンライン授業。友達は一人もつくれていない―。東京都内の私立大2年新川美桜さん(20)=仮名=は2020年度、一度も対面授業がなかった。今年4月からようやく対面も始まったが、週に1度、1こまだけ。大学生としての実感を持てずに自問する。「私は一体何者なんだろう」

 

 当たり前の生活

 オンラインで出される膨大な量の課題をこなしては、画面越しに授業を受けるという「作業」を繰り返す毎日。憧れていた演劇サークルには「毎月PCR検査を受けること」が義務付けられた。経済的負担や「陽性になったら多くの人に迷惑を掛ける」という精神的なハードルが高く、参加できずにいる。

 友達と学食に行ったり、旅行に行ったりしたいと思っていたが、いまだにかなわない。「当たり前の大学生活を送りたいだけなのに」。ストレスで食欲が減り、体重は5キロ減った。別の大学に通う高校時代の友達は、対面授業が徐々に増えている。楽しそうな話を聞くのがつらく、疎遠に。

 実家で一緒に住む高校3年の妹が毎日登校する姿を見ると、複雑な感情が芽生える。「どうして大学生だけ駄目なのか。今の私は高校生ではないけれど、大学生という気もしない」

 都内の美術大に昨年進学した相原琴乃さん(19)=仮名=も1年間、全てオンライン授業だった。今年4月から対面となったが、緊急事態宣言が出て再び全てオンラインとなった。年間200万円の学費に見合う学びができていると感じず、親に申し訳ない気持ちが募る。「SNS(会員制交流サイト)で仲良くなった大学の友達はいる。でも、会ったことはないし、顔も名前も知らない」

 

 世界に自分1人

 都内の私立大で教育学を学ぶ2年森岡結佳さん(19)=仮名=は、大学の外でやりがいを見つけた。オンライン授業では、学生同士で話し合う時間が設けられている。だが、相手の表情が読み取りづらく、無言になることも多い。教育現場で重視される「非言語コミュニケーション」が身に付く気がしない。将来、対面のやりとりが苦手という悪い意味で「コロナ世代」と呼ばれるのではないかと不安だ。

 1週間近く家から出ないこともあった。ずっとパソコンに向かっていると「世界には自分1人しかいないんじゃないか」と錯覚するほど、強い孤独感に襲われた。

 転機は今年4月に訪れた。SNSで誘われ、地元の若者同士の交流を深めるコミュニティーに参加した。コロナ禍で自分のように孤独を抱える人の多い状況をどうにかしたいと、地域住民が集うイベントを企画し、充実感を得ている。「本当はこういった実践的な学びを大学でしたかった」

 SNSには「#大学生の日常も大切だ」というキーワードとともに、対面授業の全面再開を求める投稿があふれている。「なんのために大学に入ったんだろう」「これ以上苦しめないで」

 

 相談、濁流のよう

 コロナ禍は若い世代の心をむしばんでいる。文部科学省が3月、全国の大学生ら1744人から回答を得た調査では、約3割が学内の友人関係の悩みを抱えていた。その多くが「友人が思うようにつくれない」「友人と思うように交流できない」と回答した。秋田大が昨年5~6月に実施した調査では、回答者の1割超に中等度以上のうつ症状がみられた。

 24時間体制でチャット相談を受けるNPO法人「あなたのいばしょ」(東京)には、1日平均670件の相談が寄せられ、約700人のボランティアが対応している。相談の8割が29歳以下だ。理事長で慶応大4年の大空幸星さん(22)は「濁流のように相談者があふれ、現場は逼迫(ひっぱく)している。相談できる受け皿を拡大することが必要だ」と語る。

 友達ができない、アルバイトの場を奪われ困窮している…。相談内容はさまざまだ。「孤独は個人ではなく、社会全体の問題として捉えなければならない。どれだけの人が、なぜ孤独に追い込まれているのか。実態を把握し、対策に取り組む必要がある」と訴えた。