安来市出身のラッパー、SKRYU(スクリュー)さん(25)が日本のヒップホップ界で頭角を現してきた。この春にあったMCバトル大会で初優勝し、初のミニアルバムも発表。持ち味の「ディスらないラップ」には島根愛が宿る。 (吉田真人)
本名植田敬助さん。松江工業高校時代、高校生のラップ選手権を聴き「韻を踏んでいてめちゃくちゃ気持ちいい」と引かれた。3年の時には学校の文化祭で自らラップを披露するなど楽しさに触れた。
愛媛県内の大学に進学して土木を学ぶ傍ら、本格的にラップを始めた。4年の時、即興でラップをぶつけ合う「MCバトル」の全国規模の大会に出場したが、1回戦で敗退。帰郷して山陰合同銀行に就職した。
入行して間もなく、全国トップクラスのMCバトル「戦極MCBATTLE」の本戦につながる大会で優勝し、手応えを得た。仕事を続けながら週末ごとに東京などに出向いて活動。ラップに力を入れようと銀行は1年で退職して上京した。現在は音楽活動に専念する。
今年4月の戦極MCBATTLEは、トーナメントを勝ち上がって初めて栄冠を手にした。音源制作にも力を入れ、初のミニアルバム「OUT OF MEMORY(アウトオブメモリー)」をデジタルリリースした。
MCバトルは互いにラップで批判し合うスタイルが多い中、SKRYUさんの特徴はディスらない(さげすまない)ラップ。「ラップには人柄が出る。MCバトルは言葉のけんかだが、自分のキャラには合わない」と自己分析し、巧みな比喩を駆使するなど独自の路線で戦う。
アルバムには、銀行を退職する際の葛藤や家族への思いなど、小気味良いサウンドに等身大の歌詞が詰まった8曲を収録。MCバトルになじみがない人にも「楽曲を窓口に興味を持ってもらえたらうれしい」と期待する。
高校時代には島根県知事と意見交換するフォーラムに参加して提案したり、大学では島根への若者定住策を探ったりしてきた島根愛は今も変わらない。「家族や学校の先生、友人、上司など地元の皆さんの支えでここまで来られた。島根にいたときの感情で作ったアルバムなのでぜひ聴いてほしい」と思いを語る。