中国電力島根原発2号機の周辺30キロ圏内には全国の原発立地地域で3番目に多い約46万人が暮らす。住民の避難計画は第三者が内容をチェックする仕組みはなく、解決すべき課題が山積する。再稼働の是非を議論する上で、住民の不安を解消することは必須だ。

 島根県から最大27万人が避難する岡山、広島両県の49市町村のうち、18市町村が避難者の受け入れマニュアルを作っていない。各市町村の防災担当者は「豪雨災害や新型コロナウイルス対策に人員が割かれ、手が回らなかった」と口をそろえる。

 岡山市では避難者を受け入れるスペースが足りないことも判明。車で避難した松江市民が立ち往生する恐れがある。

 原発で事故が起きた場合、島根、鳥取両県は住民の携帯電話とスマートフォンに緊急速報メールを配信し、ツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)を駆使して情報を周知する。さらに、ウェブサイトやアプリで経路情報を提供し、円滑な避難を可能にすると説明する。

 しかし、原発に近い住民から避難を始め、周辺住民にはその間、自宅などで待機してもらう「段階的避難」は目的や効果が十分に浸透していない。避難車両が道路に殺到し、住民が渋滞に巻き込まれて車内で被ばくすれば本末転倒だ。

 今夏の豪雨災害では至る所で幹線道路が寸断された。水害や雪害が原発事故と同時に起きる「複合災害」への備えは十分とは言い難い。自力で避難が困難な「要支援者」の不安も拭い去れていない。

 避難計画は島根原発から30キロ圏内の島根、鳥取両県と、松江、出雲、安来、雲南、米子、境港の6市がそれぞれ作成した。再稼働の是非を議論する前に、実効性が確保されているかどうかいま一度、検証し、住民の不安を置き去りにしない対応が必要になる。