中秋の名月
中秋の名月

 21日は旧暦8月15日。十五夜にあたり、夜の月は「中秋の名月」と呼ばれる。特に今年は8年ぶりに満月の時期と重なった。境内から宍道湖を一望できる出雲市園町の倉留寺(そうりゅうじ)から眺める月は、中国地方で初めて一般社団法人夜景観光コンベンション・ビューロー(埼玉県新座市)から「日本百名月」に選ばれた。湖上に浮かぶ美しい満月を収めたい!東の空を覆い始めた雲に少し不安を覚えつつ、寺に向かった。(Sデジ編集部・宍道香穂)

 

 松江市中心部から宍道湖畔を車で30分。国道431号沿いの長い石段を上り、境内に到着した。宍道湖が一望できる見晴らしの良い境内に、万燈がずらりと並び、月を楽しむ「観月会」の準備が進んでいた。スタッフが徐々に火をともし、幻想的な風景が完成した。

着々と、月見の準備が進められる=出雲市園町、倉留寺
日没前の境内からの眺め

 

 午後6時過ぎ、日が沈んで辺りが暗くなり始めた。そろそろ月が出てきそうと、思いきや東の空には雲が…。しばらくすると、雲の切れ間から薄い光が見え隠れし、月が出てきたことがわかった。このまま雲から漏れる光を撮るだけで終わってしまうの? 8年ぶりのレアな光景、見られないなんて嫌すぎる!

空にぼんやりと見えるのが月の光

 焦りを感じながらじっと待っていると、ついに、くっきりと丸く明るい月が姿を現した。来場客からは「おおーっ」「きれい!」との歓声。シャッターを切る指にも力が入る。満月の光が湖面に反射し、穏やかな波に揺れている。何とか月と湖面の双方を画角に収め、この感動を伝えられないか。シャッターを切り、画面をチェックすると…。

 

 撮れていた!月の出始めは雲に隠れていたため、月と宍道湖の間が少々開いてしまったが、何とか「湖上の月」を収めることができた。肉眼で見る光景には劣るものの、明るい月ときらめく湖面の美しさは伝わりそうだ。

 倉留寺の観月会は1999年から毎年開かれている恒例行事。昨年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となり、2年ぶりの開催となった。毎年300人が訪れる人気の企画だが、コロナ禍も踏まえて、この日の観客は約30人に限定した。岡大善住職(40)は「国道の工事中で少し殺風景だが、ここ数日、きれいな月がよく見える。2年ぶりの観月会を楽しんでもらえたら」と、ほっとした様子で話した。

本堂から夜空を眺める来場者たち

 
 本堂には月見団子やすすきが飾られており、趣のある雰囲気。秋の恒例行事として友人らと毎回参加しているという出雲市大津町の女性は「毎年、月をあしらった素敵な招待はがきが届く。今年の月もきれいだった」と笑みを浮かべた。境内ではギターの弾き語りもあり、来場者が幻想的な雰囲気で秋の夜長を楽しんでいた。

 撮影と取材の緊張から解放され、ふと月を見ると、いつの間にかずいぶんと高い位置に移動していた。心地よい夜風に当たりながら改めてじっと名月を眺め、ほっとひと息。来年は仕事を忘れ、ゆっくりと月をめでたいと思った。