岸田新総裁の主な経済政策
岸田新総裁の主な経済政策

 自民党新総裁に選出された岸田文雄前政調会長は経済政策の柱に所得格差是正を据える。中間層を分厚くするには、大企業、富裕層優遇との批判が多かった安倍政権の政策「アベノミクス」の修正が課題となる。新型コロナウイルス禍を克服し、経済成長の道筋を示せるかどうかも問われる。

 

 「国民の皆さんに協力していただける雰囲気をつくっていかないといけない」。29日に新総裁として初めて臨んだ記者会見で、岸田氏はコロナ対策として数十兆円規模の経済対策の必要性を強調した。年内に対策をまとめ、裏付けとなる2021年度補正予算の早期成立を目指す。

 補正予算には、コロナ禍で生活が苦しくなった人への給付金や、日本を科学技術立国にするための「10兆円規模の大学ファンド設立」など、総裁選の公約とした政策の予算を計上する見通しだ。

 大規模な経済対策で財政の一段の悪化は避けられない。岸田氏は、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を25年度に黒字化する政府の財政健全化目標の先送りを容認する考えだ。金融政策では、物価上昇率2%を目標とする政府と日銀の協定を維持するかどうかが焦点となる。

 小泉政権が推し進めた規制緩和や構造改革を、安倍政権もアベノミクスの一環として引き継いだ結果、岸田氏は「富める者と富まざる者の分断が生まれた」と指摘。こうした「新自由主義的政策」は転換すると訴える。

 その代わりに提唱するのが、格差是正に向けた「令和版所得倍増計画」だ。コロナ収束後の経済、社会像を示す「『新しい日本型資本主義』構想会議」も設置する。緊急課題の経済安全保障では、重要技術の海外流出を防ぐため「経済安全保障推進法」を制定し、担当閣僚を置くとしている。

 農業では、生産者への支援強化や輸出拡大に取り組む。災害に強い地域づくりを目指し、防災・減災や国土強靱(きょうじん)化への投資を増やす。地方創生に向けて観光業支援を拡充することも掲げた。

 エネルギー政策を巡っては、原発の再稼働を進め、使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」の維持も主張。東日本大震災の復興支援にも引き続き力を入れ「被災者に寄り添う」としている。