アスリートへの性的な意図を持った撮影や画像拡散の問題で、日本オリンピック委員会(JOC)が被害把握のため昨年11月に設置した特設サイトに寄せられた情報提供が東京五輪・パラリンピック前後で倍増し、今月15日時点で約2500件に上ることが16日、分かった。7月上旬時点で約1300件だったが、約3カ月で急増した。警視庁などと協力して逮捕者が相次ぎ、東京大会で問題への関心が高まった背景があるとみられる。
スポーツ界の性的画像を巡る問題は昨年8月、日本代表経験もある陸上女子選手が日本陸上競技連盟のアスリート委員会に被害を相談して表面化。JOCなどスポーツ7団体が盗撮や写真・動画の悪用を「卑劣な行為」として被害撲滅に取り組む共同声明を出してから、間もなく1年となる。JOCは提供された情報を関係機関と共有しており、籾井圭子常務理事は「忘れられていないことは、すごく重要だ。定期的にこの問題を発信し、皆さんに意識を持ち続けてもらえれば」と強調した。
東京五輪は新型コロナウイルス禍で大半の会場が無観客となったが、体操女子ドイツ代表がレオタードではなく「ユニタード」と呼ばれる足首までを覆うボディースーツで競技し、海外でも深刻化する被害の対応策に一石を投じた。
選手の性的画像問題は社会問題化し、5月には警視庁がテレビ番組の女性アスリートの競技画像をアダルトサイトに無断転載したとして、著作権法違反容疑でサイト運営者の男を逮捕。JOCの情報を基に立件に踏み切った全国で初めてのケースだった。千葉県警も6月に名誉毀損(きそん)容疑で会社員の男を逮捕するなど、立件が相次いでいる。情報提供があったうちの半数前後が立件後にネット上から削除されたことも報告されており、抑止効果につながっている。