新型コロナウイルスに感染した時の状況を振り返る男性=松江市内
新型コロナウイルスに感染した時の状況を振り返る男性=松江市内

 4年ぶりに公示された衆院選では、新型コロナウイルス対策や東京一極集中の是正など、課題が問われる。山陰の現場、有権者の声から争点を問う。

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 7月のコロナの第5波到来により、山陰両県でも感染者数が急増した。感染力の強いインド由来の変異株「デルタ株」への置き換わりが原因。両県の対応レベルが国の指標に基づくステージ3(感染急増)に引き上げられた8月、島根県内の感染者は629人、鳥取県内は658人に達し、1カ月の最多を更新した。

 直後の9月、松江市内の20代男性が38度台後半の発熱を訴え、PCR検査で陽性と分かり、市内の医療機関に入院した。治療を受けて陰性となり、国のルールで10日後に退院したが、胸の痛みを伴う頑固なせきは残ったまま。

 「こんな状態で退院していいのか」と、症状悪化や他人への感染におびえながら元の生活に戻った。

 島根県内の医療機関は、感染者の完治よりも、病床の回転を優先せざるを得ない状況に陥っていた。

 県内では、8月23日から10日間の新規感染者が301人に到達。県はそれまで入院患者数を最大320人と見積もって専用病床を確保していたが、ぎりぎりの状態に迫った。

 医療スタッフは診察の予約や手術を延期してコロナ患者に対応。しかし手が足りず、一般診療を制限する医療機関が出始めたことから、県は入院できる感染者を「中等症以上」とし、軽い症状の人は自宅や宿泊施設で療養するよう切り替えた。

 8月下旬~9月下旬の1日当たりの自宅療養者は40~50人。これで、なけなしの病床を何とか回していたのが実態だ。

 不足が深刻なのは医療従事者も同じ。しかも入院施設のある医療機関だけでなく、在宅対応の増加とともに、感染者の健康観察を担当するマンパワーの低下も避けて通れない課題に。

 民間の訪問看護ステーションの「花みずき」(松江市国屋町)は、県の要請を受けて7~8月、13人いる看護師のうち2人が通常の訪問業務を掛け持ちしながら、朝晩の2度、自宅療養中の感染者の健康状態を電話で聞き取った。

 花みずきの高橋京子社長は「第5波レベルは対応できた。これを超える規模になると、掛け持ちの看護師を増やすことになるが、一定の経験を積まないと重症化の兆候を見落とす恐れがある」と限界を口にする。

 菅前首相は辞任表明の際、医療体制の確保に手間取ったことを反省点に上げた。そもそも山陰両県は医療資源が少なく「容量」に限りがある。コロナから住民の命を守るため、地域の実態に即した効果的、機動的な対策が求められる。 (政経部・佐々木一全)